抄録
誤嚥防止手術としての喉頭気管分離術は喉頭と気管を遮断することにより,口腔内分泌物や胃内容物の誤嚥を防ぐため,嚥下性肺炎の予防に有効で,患者・家族の QOL を非常に改善させる。しかし,これまで手術後の QOL に対する詳細な評価の報告は少ない。今回,保護者を対象としたアンケート調査を中心に,我々が喉頭気管分離術を施行した症例に対する臨床的評価を行った。アンケート項目は痰の吸引回数や入院回数がどの程度減少したか,摂食状態に変化がみられたか,発声が不能になったことで不便があるか,手術に対する不満や満足度についてである。喉頭気管分離術は,肺炎罹患の減少など,患児の QOL を改善させるが,介護者である保護者の負担を軽減させることにも大きく寄与している。発声不能で,呼吸困難,嚥下障害があり嚥下性肺炎を繰り返し,改善の見込めない重症心身障害児のような症例には適切な時期に選択すべき手術と考える。