抄録
副咽頭間隙には大血管や脳神経などが存在し,膿瘍を形成すると致命的となる可能性がある。解剖学的位置からアプローチが困難であり,小児の場合は保存的治療か外科的処置を選択するか判断に迷うことも多い。当院では2例の副咽頭間隙の感染症を経験し,いずれも CT では膿瘍を疑った。しかし1例では扁桃摘出の上,副咽頭間隙の穿刺を行うも膿汁を確認できず,もう1例は扁桃周囲を穿刺するも膿汁は吸引されなかった。いずれも抗生剤投与にて治癒した。培養検査では常在菌しか検出されなかったが血液検査や迅速抗原検査の結果より2例とも溶連菌感染と判断した。1例では経過中に川崎病を疑う症状が出現した。副咽頭間隙膿瘍はすみやかな切開排膿を推奨する意見がある一方,抗生剤の発達により保存的治療で治癒したとの報告も多い。また川崎病との鑑別も必要であり,小児の副咽頭間隙の感染症は診断,治療とも病状に応じた慎重な判断が求められる。