小児耳鼻咽喉科
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原著
小児中耳炎の中耳貯留液 pH とペプシノゲン1の検討
上出 洋介
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2011 年 32 巻 1 号 p. 47-52

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抄録

【目的】 小児中耳炎に対して病的胃食道逆流がどの程度関与しているかを調査する。
【調査方法】 種々の病態の小児中耳炎の中耳貯留液の pH 値測定と液中に含まれるペプシノゲン1(PG1)定量をおこなう。pH 値は HORIBA compact pH meter(B–211)を用いる。PG1 測定はヒト PG1 特異的モノクローナル抗体を用いた ELAISA キットを使用して吸光度450 nm で測定する。
【対象】 2009年 6 月から2010年 1 月までに鼓膜切開を行なった 0 歳から13歳までの39例(中央値:2 歳 5 カ月)である。
【結果】 pH 測定の結果,平均 pH 値7.86(SD±0.56)であった。中耳貯留液中の PG1 値100 μg/L 未満(陰性群)をカットオフ値とした結果,100 μg/L 以上の陽性所見が41%(16/39例)に得られた。陰性群の平均 pH 値が8.04(SD±0.43),陽性群の平均 pH 値が7.54(SD±0.50)で,両群の pH 値に有意な差が認められた。陽性群は 2 歳を越えると著明に増加した。
【結論】 対象となった小児中耳炎の41%に病的胃食道逆流の存在が疑われた。貯留液 pH 値を測定する事で病的胃食道逆流が予想できるひとつの機会にかもしれない。

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© 2011 日本小児耳鼻咽喉科学会
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