小児耳鼻咽喉科
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原著
当センターにおける口蓋裂児の滲出性中耳炎の検討
小河原 昇松島 明美南部 多加子
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2011 年 32 巻 1 号 p. 86-90

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抄録

  当センターにて1994~2004年に口蓋形成術を受け,術前後で耳鼻咽喉科の診察がなされた口蓋裂児233人(男122人,女111人)を対象とし,初診時と最終診察時の鼓膜所見,鼓膜チューブ留置術の有無を調査した。初診時(平均月齢10.4カ月),466耳中滲出性中耳炎有りが298耳(64.0%),無しが165耳(35.4%),外耳道狭窄 2 耳,閉鎖 1 耳であった。ただ,粘膜下口蓋裂では滲出性中耳炎有りは30耳中 6 耳(20%)であった。鼓膜チューブ留置術は220耳(47.3%)でなされていた。最終診察時(平均月齢80.4カ月)の所見は466耳中滲出性中耳炎無しが365耳(78.3%),有りが38耳(8.2%),鼓膜穿孔が24耳(5.2%),チューブ留置中が38耳(8.2%)であった。最終診察時の滲出性中耳炎無しの割合は鼓膜チューブ留置を行った耳では220耳中138耳(62.7%),行っていない耳では245耳中227耳(92.7%)であり,有意差があった。今回の結果からは口蓋裂児においても口蓋形成術時に全例に鼓膜チューブ留置術を行うのではなく,持続する滲出性中耳炎を認めた場合に鼓膜チューブ留置術を行うのが良いと考えられた。

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© 2011 日本小児耳鼻咽喉科学会
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