小児耳鼻咽喉科
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シンポジウム I 反復性中耳炎の危険因子とその対応
中耳炎の危険因子としての受動喫煙とその対応
井埜 利博
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2011 年 32 巻 3 号 p. 258-263

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抄録

  筆者らは熊谷市の小学校 4 年生を対象に受動喫煙検診を行っている。この検診は児童における受動喫煙の生体内指標である尿中コチニン(UC)測定と両親へのアンケート調査からなる。児童に UC が検出され,両親が禁煙を希望する場合のプロトコール等も確立された。2007年以降は市の公費負担によって無料で行われた。毎年,小学校 4 年生1300~1400名がこの検診を受診,その中から2010年度の1425名について受動喫煙と中耳炎との関係を後方視的に検討した。UC は約半数に検出され,UC 濃度≧5.0 ng/mL が約30%であった。また,母親の喫煙は児の UC 濃度を上昇させる大きな因子であった。中耳炎の既往児は10.2%に認められ,両親の喫煙があると UC 濃度は平均3.6倍高かった。両親の喫煙がある方が児の中耳炎の既往がやや多い傾向があった。また,UC 濃度<1.4 ng/mL の児における中耳炎既往はアレルギー合併例が多かったためと思われた。母親の妊娠中喫煙も中耳炎発生に関与すると思われた。

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© 2011 日本小児耳鼻咽喉科学会
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