小児耳鼻咽喉科
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原著
HIV 母子垂直感染の小児における反復性中耳炎の経過について
留守 卓也中山 栄一高山 直秀
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2012 年 33 巻 1 号 p. 42-47

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抄録
  UNAIDS(国連合同エイズ計画)によると2009年に新たに世界で発生した母子垂直感染例は37万人と推定されており,日本では現在累計51人となっている。今回我々は反復性中耳炎を契機に発見された HIV 母子垂直感染の 5 歳男児の症例を経験した。患児は小児の HIV 感染における CDC(米国疾病予防管理センター)分類にて A2 象限と認定され HAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)導入の適応となった。HAART 導入に伴い,HIV–RNA 数は急激に減少し,それに伴い反復性中耳炎の罹患回数も減少した。
  小児の中耳炎と HIV 感染についての文献的考察では,HIV 感染児においては高率で中耳炎の合併を認めるという報告や,HAART 導入によって中耳炎の発症が予防されたという報告を認める。今回の症例でも,HAART 導入後に明らかに反復性中耳炎の発症が抑制されており,これらの報告を裏付ける結果となった。
  今回の経験から,難治性の小児反復性中耳炎に出会った場合は,HIV 母子垂直感染について考慮に入れるべきであると思われた。
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© 2012 日本小児耳鼻咽喉科学会
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