口蓋裂症例には滲出性中耳炎が合併することはよく知られており,当院では滲出性中耳炎の治療について基本的に口蓋形成術時に一緒に鼓膜換気チューブ留置術を行っている。今回われわれはこれらの症例について検討を行ったので報告する。
平成18年から平成23年まで口蓋形成術時に鼓膜換気チューブ留置術を行った症例は51症例102耳であり,1 症例 2 耳は外耳道が狭く鼓膜切開のみを行った。これらの症例を対象として,口蓋裂型,合併症の有無,貯留液の性状,脱落後の経過について検討した。
口蓋裂の種類は両側唇顎口蓋裂14例,片側唇顎口蓋裂22例,軟口蓋裂15例,粘膜下口蓋裂 1 例であった。合併症は12例にみとめられたが,そのうち 8 例が両側唇顎口蓋裂症例であった。104耳中79耳(76.0%)に貯留液を認め,貯留液を認めた79耳中61耳(77.2%)は粘性の貯留液であった。
術前の評価では104耳中100耳(96.2%)に明らかな貯留液を認めており,口蓋形成術前の小児には滲出性中耳炎が必発と考えられ,口蓋形成術時に鼓膜換気チューブ留置術を行うべきと考えられた。
チューブ留置後自然脱落した症例は64耳あり,そのうち穿孔が残存しているのが 7 耳(10.9%),中耳炎が再燃したのが21耳(32.8%)であった。
今回の検討ではチューブの種類,留置期間は中耳炎の予後と相関がなかった。
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