小児耳鼻咽喉科
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33 巻, 1 号
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原著
  • 小河原 昇, 井上 真規, 田辺 輝彦
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      後天性真珠腫性中耳炎で経過観察中に左外耳道前壁に出現した先天性中耳真珠腫と考えられる症例を経験したので報告する。
      症例は 1 歳より滲出性中耳炎で経過観察されていた。6 歳 7 カ月,左鼓膜後上部に後天性真珠腫を認め,6 歳10カ月に左鼓室形成術I型が施行された。真珠腫が鼓室の後上部と中央部に再発し,8 歳 0 カ月に再度左鼓室形成術I型が行われた。この時の CT にて左外耳道前壁の蜂巣内に腫瘤像を認められた。
      9 歳 9 カ月に左外耳道前壁に腫瘤を認めた。CT にても左外耳道前壁内より外耳道に突出する腫瘤像を認めた。9 歳11カ月に左外耳道部腫瘤摘出術が施行された。摘出物は病理組織検査で真珠腫と診断された。術後 1 年,左外耳道前壁は上皮化し,なめらかな陥凹を認めるが角化物の堆積や真珠腫の再発を認めない。
  • 笹村 佳美, 石川 浩太郎, 菊池 恒, 市村 恵一
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      口蓋裂症例には滲出性中耳炎が合併することはよく知られており,当院では滲出性中耳炎の治療について基本的に口蓋形成術時に一緒に鼓膜換気チューブ留置術を行っている。今回われわれはこれらの症例について検討を行ったので報告する。
      平成18年から平成23年まで口蓋形成術時に鼓膜換気チューブ留置術を行った症例は51症例102耳であり,1 症例 2 耳は外耳道が狭く鼓膜切開のみを行った。これらの症例を対象として,口蓋裂型,合併症の有無,貯留液の性状,脱落後の経過について検討した。
      口蓋裂の種類は両側唇顎口蓋裂14例,片側唇顎口蓋裂22例,軟口蓋裂15例,粘膜下口蓋裂 1 例であった。合併症は12例にみとめられたが,そのうち 8 例が両側唇顎口蓋裂症例であった。104耳中79耳(76.0%)に貯留液を認め,貯留液を認めた79耳中61耳(77.2%)は粘性の貯留液であった。
      術前の評価では104耳中100耳(96.2%)に明らかな貯留液を認めており,口蓋形成術前の小児には滲出性中耳炎が必発と考えられ,口蓋形成術時に鼓膜換気チューブ留置術を行うべきと考えられた。
      チューブ留置後自然脱落した症例は64耳あり,そのうち穿孔が残存しているのが 7 耳(10.9%),中耳炎が再燃したのが21耳(32.8%)であった。
      今回の検討ではチューブの種類,留置期間は中耳炎の予後と相関がなかった。
  • 籠谷 領二, 市川 朝也, 安達 のどか, 坂田 英明
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      過誤腫は,正常な組織成分が過剰に増生して結節状を呈している先天異常であり,身体のあらゆる部位に発生しうるが,口腔領域の報告例は比較的稀である。今回われわれは舌背部に発生した平滑筋性過誤腫の 1 例を経験した。症例は 4 ヶ月の男児で,3 ヶ月健診で舌の腫瘤を指摘された。診断目的を兼ねて腫瘤摘出術を施行したところ,病理組織学的に平滑筋性過誤腫と診断された。術後 1 年間,合併症は無く再発も認めていない。過去の報告では舌の平滑筋性過誤腫に対して摘出手術が一般的に施行されており再発例は無いが,成人後に増大した過誤腫の症例は報告されており,長期にわたる経過観察が望ましいと考えられた。
  • 臼井 智子, 増田 佐和子
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      RSV 感染症により入院治療を行った24例のうち,急性中耳炎を合併した18児を対象とし,年齢,重症度,臨床症状,鼓膜所見,検出菌や治療,経過を検討した。RSV 感染に合併した急性中耳炎児の初診時月齢は,0 ヵ月から 3 歳 5 ヵ月,平均12.3ヵ月,中央値11.5ヵ月であった。2 歳以上に比べ 2 歳未満で有意に中耳炎の合併率が高く,軽症は 7 例,中等症は 3 例,重症は 8 例であった。抗菌薬投与や鼓膜切開術を行わずに急性中耳炎が治癒したものは 2 例のみであり,軽症,中等症の 4 例で翌日に増悪を認め,そのうち 1 例は治癒後にも再燃を認めた。上咽頭からは12例,中耳貯留液からは 1 例で細菌が検出されており,重症度や経過との関連は認められなかった。細気管支炎により入院での全身管理を要する RSV 感染は低年齢児に多い。中耳炎を認めた場合,翌日に悪化することもあるため,軽症であっても連日の注意深い観察と小児科医との連携が必要であると考えられた。
  • 濵田 浩司, 菅谷 明子, 片岡 祐子, 前田 幸英, 福島 邦博, 西﨑 和則
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      生後11ヶ月で人工内耳埋込術を施行した髄膜炎後難聴の 1 例を経験したので報告する。症例は生後 8 ヶ月で,細菌性髄膜炎に罹患し,治癒後の聴性脳幹反応検査では両側 105 dBnHL で反応がみられなかった。内耳 MRI の 3D 再構築画像で右内耳は既に閉塞し,内耳内腔の骨化が急速に進行していると考えられた。左内耳は今後閉塞が高度となる可能性が考えられ,直ちに左人工内耳埋込術を施行した。髄膜炎後の難聴にはしばしば蝸牛内骨化を伴うが,中には髄膜炎罹患後約 2 週間から内耳骨化が進行するような,急速な骨化例もある。髄膜炎直後の乳児では難聴の早期発見のための ABR 検査や,難聴の存在を疑われた場合の迅速な MRI 検査は不可欠である。
  • —聴覚障害児の就学先別言語発達評価—
    石田 多恵子, 猪野 真純, 仲野 敦子, 有本 友季子, 黒谷 まゆみ, 森 史子, 工藤 典代, 笠井 紀夫, 福島 邦博
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      聴覚障害児の日本語言語発達に関する全国研究として,厚生労働科学研究補助金事業「感覚器障害戦略研究—聴覚分野—」が実施され,日本語言語発達を評価するテストバッテリー ALADJIN(アラジン・Assessment of Language Development for Japanese chIldreN)が提唱されている。当院もこの研究に参加し,4 歳から12歳までの先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル70 dB 以上)計44名に対して ALADJIN を実施し,同事業による聴覚障害児全国集計平均値(平成22年 5 月・感覚器障害戦略研究中間報告)との比較検討を行った。
      言語力が高く,音声によるコミュニケーションが可能な児の多くは普通小学校(メインストリーム)に在籍していた。聾学校小学部低学年では言語力の低い児が多くみられたが,同小学部高学年になると全国集計値よりも高い言語力を有する児がみられ,各々の児に適した教育により言語力を伸ばせる可能性が示唆された。
  • 入川 直矢, 小河 孝夫, 加藤 智久, 戸嶋 一郎, 清水 猛史
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      2005年 1 月から2011年 4 月の間に滋賀医科大学病院で川崎病と診断した106例中 4 例(3.8%)に,頸部造影 CT で咽後間隙に ring enhancement を伴わない低吸収域が認められた。それら 4 症例の年齢は 1 歳,5 歳,6 歳,11歳で,平均5.6歳であった。初発症状は全例発熱と頸部リンパ節腫脹で,頸部リンパ節炎として抗菌薬の投与が行われたが改善しなかった。その後数日で苺舌や不定形発疹など他の主要症状が出現し,川崎病と診断した。川崎病の診断後,γ グロブリンとアスピリンの投与が行われ症状は改善し,咽後間隙の低吸収域も外科的な排膿処置を施すことなく軽快した。
      抗菌薬への反応に乏しい小児の頸部リンパ節炎症例で咽後間隙の低吸収域が認められた場合は,ring enhancement の有無を確認することで川崎病の早期診断につながる可能性が示唆された。
  • 留守 卓也, 中山 栄一, 高山 直秀
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      UNAIDS(国連合同エイズ計画)によると2009年に新たに世界で発生した母子垂直感染例は37万人と推定されており,日本では現在累計51人となっている。今回我々は反復性中耳炎を契機に発見された HIV 母子垂直感染の 5 歳男児の症例を経験した。患児は小児の HIV 感染における CDC(米国疾病予防管理センター)分類にて A2 象限と認定され HAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)導入の適応となった。HAART 導入に伴い,HIV–RNA 数は急激に減少し,それに伴い反復性中耳炎の罹患回数も減少した。
      小児の中耳炎と HIV 感染についての文献的考察では,HIV 感染児においては高率で中耳炎の合併を認めるという報告や,HAART 導入によって中耳炎の発症が予防されたという報告を認める。今回の症例でも,HAART 導入後に明らかに反復性中耳炎の発症が抑制されており,これらの報告を裏付ける結果となった。
      今回の経験から,難治性の小児反復性中耳炎に出会った場合は,HIV 母子垂直感染について考慮に入れるべきであると思われた。
  • 有本 昇平, 有本 友季子, 仲野 敦子, 大熊 雄介, 工藤 典代
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      ムコ多糖症はムコ多糖分解酵素が障害されることによりムコ多糖がライソゾーム内に蓄積され臓器・組織の肥大や様々な機能障害を呈す。耳鼻咽喉科領域の症状としては上気道閉塞,嚥下障害などを引き起こし,また,喉頭,気管に対しても蓄積するため手術操作にも影響を与える。今回,当院にてムコ多糖症 2 症例に対し喉頭気管分離術を施行したため報告する。
      症例 1 は10歳女児。7 歳時に Sanfilippo 症候群と診断され10歳時より睡眠時無呼吸に対して nasalCPAP を使用している。13歳時,嚥下性肺炎を反復するため喉頭気管分離術を施行し改善を認めた。
      症例 2 は18歳男性。3 歳時にアデノイド切除術・口蓋扁桃摘出術を施行されていた。5 歳時に Hunter 症候群と診断され18歳頃より繰り返す嚥下性肺炎により喉頭気管分離術を施行した。術後経過は良好であったが,術 1 年を経過した頃より気管の扁平化及び気管内肉芽の増生を認めた。
  • 冨山 道夫
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 33 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      2010年急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(以下ガイドライン)が作成された。これは急性鼻副鼻腔炎の重症度を 3 つに分類し,重症度に応じた抗菌薬選択をペニシリン系抗菌薬を中心に行うものである。今回は当院における小児急性鼻副鼻腔炎の薬剤耐性菌の現況を調査し,ガイドラインに示された抗菌薬選択が実地医家の現状に沿うものかどうかについて検討を行った。対象は2009年から2010年までに当院を受診した小児急性鼻副鼻腔炎症例のうち膿性鼻汁より,Streptcoccus pneumoniae もしくは Haemophilus influenzae が検出された522名である。その結果小児急性鼻副鼻腔炎の第一選択剤は amoxicillin (AMPC),第二選択剤は cefditoren (CDTR)が適当であると考えられ,ガイドラインを支持する結果を得た。
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