抄録
肺炎球菌ワクチンの普及や新規抗菌薬の登場により,小児急性中耳炎の臨床像は大きく変わってきている。しかし遷延性や反復性を示す難治性中耳炎患児はまだ明らかな減少は認められず,耳鼻咽喉科臨床において対応に難渋する場合が少なくない。中耳炎の難治化には,集団保育による細菌の容易な伝播,2 歳未満の低年齢における免疫未熟,薬剤耐性菌,特に耐性インフルエンザ菌の増加,バイオフィルム形成などの要因が複雑に絡み合っていると考えられる。急性中耳炎を難治化させないためには,(1) 両側罹患,(2) 集団保育,(3) 2 歳未満,(4) 鼻副鼻腔炎の併発,のリスクファクターを有する患児に対しては,初期から急性中耳炎診療ガイドラインの治療アルゴリズムの step-up 治療を行い,さらに細菌量を減少させ,バイオフィルム形成を阻止するために早期の鼓膜切開・開窓が必要である。難治化してしまった中耳炎に対しては,起炎菌の薬剤耐性やバイオフィルム形成などを考慮して,新規抗菌薬,マクロライド抗バイオフィルム治療,鼓膜換気チューブ留置術,十全大補湯による免疫賦活,免疫グロブリン製剤の補充療法,などを適確に組み合わせて治療を行うことが必要である。