小児耳鼻咽喉科
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原著
繰り返す外耳道異物から自閉スペクトラム症(ASD)が判明した一例
臼井 智子増田 佐和子
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2016 年 37 巻 1 号 p. 52-57

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抄録

 外耳道へ異物挿入を繰り返すことをきっかけとして自閉スペクトラム症(ASD)が判明した一例を経験した。症例は 6 歳男児で,頻回に外耳道への異物挿入を繰り返すことから耳鼻咽喉科を受診し,心療科を紹介して ASD と診断された。反復的な行動だけでなく社会的コミュニケーションの障害,衝動性の高さも合併しており,治療介入により症状は徐々に改善した。外耳道へ異物挿入を繰り返す機序として,ASD の特徴である常同行動が本児の内的要因と環境変化などの外的要因により強迫的行動まで発展したことと,感覚知覚異常により痛みに鈍感であったことが考えられた。ASD では適切な対応がなされないと不適応から二次的な精神障害に至る場合があり,早期発見と早期介入が重要である。外耳道異物挿入が ASD 発見のきっかけになる可能性があり,心療科や児童精神科,小児神経科と連携することが必要であると考えられた。

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© 2016 日本小児耳鼻咽喉科学会
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