抄録
小児気管切開管理において合併症の予防は重要であり,特に気管切開カニューレ関連の合併症には注意を要する。適切なカニューレの選択は合併症の予防において特に重要である。今回,カニューレ選択のための情報を得ることを目的に,カニューレ先端部の接触によって生じる力を測定し,各種カニューレの特徴を実験的に検討した。気管カニューレ縦方向に力を加えた場合にカニューレ先端にかかる力は,ステンレスコイル入りシリコーン(SUSコイル+SI)製,シリコーン(SI)製,ポリ塩化ビニル(PVC)製の順に小さく,カニューレ軸方向に垂直に力を加えた場合では,SI製,PVC製,SUSコイル+SI製の順に小さかった。過度な頸部後屈などで気管とカニューレが接触しやすい症例ではSUSコイル+SI製を,気管軟化症などでカニューレ軸と垂直方向に力がかかりやすい症例ではSI製を使用する方が合併症を予防できる可能性が示唆された。