小児耳鼻咽喉科
Online ISSN : 2186-5957
Print ISSN : 0919-5858
ISSN-L : 0919-5858
38 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 大原 卓哉, 清野 由輩, 牧 敦子, 山下 拓
    原稿種別: 原著論文
    2017 年 38 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     小児気管切開管理において合併症の予防は重要であり,特に気管切開カニューレ関連の合併症には注意を要する。適切なカニューレの選択は合併症の予防において特に重要である。今回,カニューレ選択のための情報を得ることを目的に,カニューレ先端部の接触によって生じる力を測定し,各種カニューレの特徴を実験的に検討した。気管カニューレ縦方向に力を加えた場合にカニューレ先端にかかる力は,ステンレスコイル入りシリコーン(SUSコイル+SI)製,シリコーン(SI)製,ポリ塩化ビニル(PVC)製の順に小さく,カニューレ軸方向に垂直に力を加えた場合では,SI製,PVC製,SUSコイル+SI製の順に小さかった。過度な頸部後屈などで気管とカニューレが接触しやすい症例ではSUSコイル+SI製を,気管軟化症などでカニューレ軸と垂直方向に力がかかりやすい症例ではSI製を使用する方が合併症を予防できる可能性が示唆された。
症例報告
  • 岩本 文, 菅原 一真, 広瀬 敬信, 原 浩貴, 橋本 誠, 山下 裕司
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     TSHの支配を受けずに甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺結節は自律性機能性甲状腺結節(Autonomously functioning thyroid nodule: AFTN)と呼ばれ,本邦での小児例の報告は数少ない。今回,甲状腺機能亢進症状をきっかけに受診し,AFTNと診断された小児例を経験した。症例は14歳男児,前頸部腫脹と甲状腺ホルモン値の上昇を認め紹介となった。甲状腺両葉に1つずつ腫瘤が存在し,左葉腫瘤でより腫大を認めた。どちらもシンチグラフィでの集積を認めたが,より高集積を示し腫大した左葉腫瘤が症状の主座と考えられた。まず甲状腺機能亢進症状を改善させ甲状腺ホルモン値を正常化させたのち,甲状腺左葉切除術を施行した。術後経過は良好で,甲状腺機能は正常化したまま経過している。現時点では非中毒性と考えられる右葉の残存結節が長年の経過で中毒性結節へ移行する可能性があり,長期的な経過観察が必要である。
  • 高橋 希, 光澤 博昭, 高野 賢一, 氷見 徹夫
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     症例は,化膿性髄膜炎の後遺症で重篤な心身障害を有する14歳男児。脊椎側弯が進行し,11歳時に喉頭気管分離術を施行したが,術後5ヵ月時に気管腕頭動脈瘻を形成した。解剖学的に外科的処置よりも腕頭動脈コイル塞栓術が確実であると考え,5つのコイルを腕頭動脈に留置し,救命することに成功した。2年後,胸部レントゲン写真で偶然に右主気管支内のコイルが発見され,留置したコイルの一部が脱落したものと考えられた。全身麻酔下に軟性喉頭鏡と鉗子を用いて除去し,以降大きな合併症なく経過している。気管腕頭動脈瘻は,気道確保術後に生じ得る重大で致死率の高い合併症の一つである。治療法としては,外科的腕頭動脈離断術・結紮術が主流であるが,近年は腕頭動脈コイル塞栓術の有効性も報告されつつある。一方で,本症例のような処置後の合併症が起こる可能性も否定できず,さらなる検討が望まれる。
  • 金村 信明, 中野 友明, 愛場 庸雅, 木下 彩子, 植村 剛, 副島 千晶, 天津 久郎
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     2005年から2014年の10年間に当院で実施した16歳以下の気管切開症例,110例について生命予後に関わる因子および気管切開離脱の可否を後方視的に検討した。年齢は1歳未満での実施が多かった。原疾患としては1歳未満では顔面奇形と心疾患が多く,1歳以上になると神経筋疾患の占める割合が増えていた。年齢による生命予後の検討では生存曲線に有意差は認められなかった。目的別での検討では,呼吸管理目的の群で予後不良であった。原疾患別での検討では,急性脳症や脳腫瘍および心疾患の症例では予後が不良であった。検討の結果,生命予後は原疾患に左右されるものであり,気管切開の時期は生命予後の因子とはならず,適切な時期に手術を実施することが重要であることが示唆された。
  • 坪松 ちえ子, 高野 賢一, 新谷 朋子, 氷見 徹夫
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     ダウン症小児ではアデノイドや口蓋扁桃肥大に加え,顎顔面形態の奇形,筋緊張低下による舌根沈下,相対的巨舌,舌扁桃肥大などの解剖学的理由や肥満傾向が上気道閉塞を引き起こし,高頻度に睡眠時無呼吸を合併すると言われている。今回我々は高度肥満を伴い,重度OSAを呈したダウン症症例の治療を経験したので報告する。
     症例は14歳女児,主訴はいびき,睡眠時無呼吸,座位で睡眠,診察時所見として口蓋扁桃肥大と巨舌,舌扁桃肥大を認めた。簡易睡眠検査ではREIが17.3回/時であったが,PSGではAHIが58.1回/時と重度OSAと頻回な中途覚醒が認められた。CPAPを導入したが,アドヒアランスが不良であったため,全身麻酔下両口蓋扁桃摘出術施行,術後はネーザルハイフローを使用した。術後PSGではAHI2.9回/時と改善し,中途覚醒は減少,睡眠ステージもほぼ基準範囲であった。
  • 今泉 直美, 小林 斉, 井上 由樹子, 中村 泰介, 庄司 育央, 小林 一女, 磯山 恵一
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     Numb chin syndromeを初発症状として認めた急性リンパ性白血病の1例を報告する。症例は14歳男児。右口唇から下顎の痛みと痺れ,知覚麻痺を自覚し徐々に増悪した。近医小児科クリニック受診し精査加療が必要と考えられ当院耳鼻科受診した。初診時右口唇から下顎の三叉神経第3枝領域に疼痛と痺れ,知覚障害を認め,さらに右口蓋扁桃の腫大を認めた。血液検査では汎血球減少や芽球は認めず,LDH 700 U/l, sIL–2 2510 U/mlと高値を認め,造血器腫瘍が疑われた。頸部造影CT検査では右口蓋扁桃の腫大を認めた。右口蓋扁桃の生検を施行し,リンパ球様細胞のびまん性増殖を認め,免疫染色ではCD20(+), LCA(+), CD79a(+), CD10(+)でありBurkittリンパ腫が疑われた。その後骨髄検査にて成熟B細胞性白血病と診断した。化学療法開始後,右口唇から下顎の痛みと痺れ,知覚障害は徐々に改善を認め消失した。Numb chin syndromeとはオトガイ神経の単麻痺によって生じる下口唇からオトガイ部の痺れや感覚鈍麻・脱失をきたす症候群である。原因疾患は悪性腫瘍,全身性疾患,歯科疾患に大別されるが,悪性腫瘍による圧迫や浸潤が原因となることが多い。本症例のように貧血や出血傾向,易感染性,口腔内症状といった急性白血病の症状が認められなくても,口唇や下顎の痺れを初発症状として悪性腫瘍が存在することを注意し原因検索を行うべきである。
  • 川島 佳代子, 寺田 理沙, 大西 恵子, 山戸 章行
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     小児期に発症したアレルギー性鼻炎の罹病期間は長期にわたり,薬物の使用年数も長期になる。アレルゲン免疫療法はアレルギー性鼻炎,気管支喘息に対して自然経過を修飾する可能性があるとされる。今回アレルギー性鼻炎,気管支喘息を合併した小児に対し,ダニアレルゲン皮下免疫療法を施行した。治療後,鼻炎症状は改善し,生活の支障度も改善した。また咳症状は改善し,ピークフロー値は薬物を減量しても低下を認めなかった。アレルゲン免疫療法は,症状改善や薬物使用量の減少だけでなく,新規感作抑制,喘息発症抑制作用も報告されており,小児において治療を考慮すべき患者も存在する。現在12歳未満の患者に対して舌下免疫療法の適応はなく,皮下免疫療法の適応のみとなっているが,皮下免疫療法は疼痛があり,施行医療機関が限られており,治療できる小児は限定される。将来的には舌下免疫療法の小児への適応拡大が望まれる。
  • 佐藤 紀代子, 杉内 智子
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     1歳2か月から現在まで長期的な指導,経過観察を行い,中学校期に人工内耳手術を行った高度難聴児の一例を経験したので報告した。
     本例は,難治性滲出性中耳炎の影響で幼児期に補聴器休止状態が長期間であったため,聴覚活用が充分になされてきたとはいえない状況であったが,術直前まで補聴器を活用していた。13歳時に本例自身の主導で手術に至り,術後,生活音は認知改善しても語音聴取には差異はなかった。しかし,両親および本例自身はコミュニケーションが円滑になったと評価している。人工内耳の評価には音やことばの聴取だけではなく,術後の本人のQOLの向上や家族にもたらす効用を検討していく方法が必要と考えられた。また,聴覚障害児の育成には様々な要因が絡み,両親も含めた長期的な観察が必要であった。
  • 樋口 仁美, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     顔面神経麻痺の原因は多岐にわたる。治療には,原因の同定が必要である。乳幼児期は先天性と耳炎性が多く,学童期以降になるとHunt症候群の割合が増加してくる。また,骨折や出血を伴わない,比較的軽微な外傷に伴う顔面神経麻痺の報告もある。後天性末梢性顔面神経麻痺の中で,小児,成人を通じて最も頻度の高いのが特発性麻痺(ベル麻痺)である。このため,小児においてCT,MRIの画像検査は検査の困難性から慎重になりがちである。今回の症例のように末梢性顔面神経麻痺以外に症状を有している際には腫瘍性病変による顔面神経麻痺も考慮にいれ,積極的に画像診断を行うことも必要と思われた。
  • 籾山 香保, 大原 卓哉, 牧 敦子, 山下 拓
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 38 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
     小児声門下異物は,気道異物の中でも稀であるが窒息の危険性があり,緊急での気道確保が必要となることがある。今回,我々はウッドチップが声門下に嵌頓し呼吸困難を来したため気管切開術後に声門下異物摘出術を施行した症例を経験したので報告する。症例は,1歳2カ月の男児。ウッドチップを口にくわえて転倒した後,息苦しそうにしていたため気道異物を疑われ当院3次救急に搬送された。喉頭評価を依頼され,診察したところ異物を声門下に認めた。診察中に補助換気を必要とする呼吸状態となり気管切開術を先行して行い,その後に異物摘出術を施行した。当院到着時,酸素投与にて明らかな呼吸困難は認めなかったが,診察中に症状が増悪しており,搬送が遅れれば救命が困難であった可能性がある。
feedback
Top