2019 年 40 巻 3 号 p. 256-263
平成23年度から平成28年度のA市の3歳児健診を受診した幼児の構音の誤りと誤り方の経年変化を調査した。構音に誤りのある幼児の割合は平成23年度の59.5%から平成28年度の84.1%に増加していた。3歳6か月前後に完成するとされている/k/と/ɡ/の構音に誤りのある幼児の割合は,平成23年度の24.3%と5.4%から平成28年度の52.3%と23.9%に増加していた。このことから,最近の日本の幼児の構音の獲得が遅れていることが示唆された。/k/と/ɡ/の構音の誤り方に置換や未熟構音に伴う歪みが多く認められ,6年間で増加傾向を示したことに,最近の幼児の口腔習癖に伴う不正咬合,咀嚼能力,手指の協調運動,バランス能力の低下,言語発達の遅れが関与している可能性が考えられた。/k/の側音化構音に伴う歪みが増加していたことに,口呼吸,異常な嚥下癖,口腔習癖の増加,健診に参画する言語聴覚士の構音の誤りの検出精度の向上が関与している可能性が考えられた。