小児耳鼻咽喉科
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教育セミナー
  • 小川 昌宣
    2019 年 40 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    無侵襲的胎児遺伝学的検査(NIPT)の登場により,出生前診断の件数が増加している。その背景には,女性の妊娠年齢の高年齢化という社会的要因があり,高年妊娠では染色体異常が生じやすいという生物学的事象があり,次世代シークエンサーの技術的進歩がある。胎児の染色体数的異常を母体の血液で行うNIPTが始まると,羊水検査の件数は減少したが,出生前診断を希望する妊婦の数は激増した。NIPT実施に関する施設認定の制度が作られたが,数少ない認定施設ではNIPT希望者の大波に対応しきれなかった。カップルの希望に応えるとして,産科医ですらないのにNIPTを手がける認可外施設も現れた。遺伝学的検査の進歩は生命の選択という意識を希薄にし,その誘惑をローリスクの妊婦へと広げつつある。現代社会における生きにくさ,育てにくさといった問題の解決策として出生前診断が用いられているとすれば,私達の社会の裏側には,新たな優生思想が横たわっているのではないだろうか。

シンポジウム2―小児気管切開の手技と合併症—up to date—
  • 仲野 敦子
    2019 年 40 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    小児気管切開の合併症は,早期合併症と晩期合併症がある。早期合併症としての事故抜去,晩期合併症としては,気管孔周囲の肉芽形成,気管内肉芽形成,気管腕頭動脈瘻等について述べる。早期合併症は,出血や感染等等手技に影響されるものが多いが術後管理の問題も大きい。晩期合併症は管理上の問題もあるが,予防のための手術手技上の工夫もある。

    気管切開術は皮膚を横切開とし,つり糸をかけて縦切開で実施している。全身麻酔下に極力出血させずに手術を実施することで,手術手技に伴う早期合併症の予防に努めている。つり糸の使用と,術後の鎮静等も含めた厳重な術後管理で事故抜去などの合併症を予防している。術後は,成長に伴う変化や原疾患の進行に伴う変化に対応していくために,定期的に気管内を内視鏡で確認し,肉芽形成や気管腕頭動脈瘻などの合併症の予防に努めている。その他,小児科医や看護スタッフ,家族との連携も重要である。

  • 松原 尚子, 梅﨑 俊郎
    2019 年 40 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    小児の気管切開はその施設によって対象症例の傾向が異なる。何を目的にどの程度の期間を予想して気管切開を行うのか,術前に認識して施行すべきである。気管切開の目的は2つあり,気道確保と気道管理である。我々の施設で経験した57例では気道確保目的と気道管理目的がそれぞれ半数であった。気道確保目的で気管切開した30症例のうち50%が観察期間内に閉鎖したが閉鎖まで最短で2年を要しており,ごく短期で閉鎖した症例はなかった。気管孔の管理はカニューレの安全な固定と気管壁への圧迫を防ぐことが大事である。短期に気管切開を閉鎖できる可能性が現実的に大変少ないことを考慮し,長期の気管切開予定であれば予定外事故抜去時の気道閉塞の可能性を減らし,肉芽形成を抑える気管開窓術を採用するべきであると考える。

  • 津川 二郎
    2019 年 40 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    小児の気管切開が行われる目的は,気道閉狭窄(閉塞)症例と長期呼吸管理が必要な症例,誤嚥に対する気道管理が必要な症例に大別される。近年の小児医療や在宅医療の進歩に伴い,小児の気管切開管理症例は増加傾向にある。特に重症心身障害児における気管切開管理は長期間にわたることが多く,長期管理中には原疾患の変化に伴う側弯の進行により,気管の変形や閉塞,腕頭動脈気管瘻に対する予防に対応するために気管切開カニューレの変更を必要とすることも多い。また気道狭窄疾患(声門下腔狭窄症と気管狭窄症)において通常の気管切開管理では,管理に問題が生じることがある。声門下腔狭窄症の治療における気管切開の位置や気管狭窄症の術後に長期気管切開管理を必要とする時の注意点について当院で取り組んでいる工夫を中心に報告する。

シンポジウム4―小児の摂食・嚥下障害に対する診療連携
  • 本荘 哲, 若槻 雅敏, 押川 千恵, 松本 吉洋, 法師山 絢, 松井 智美, 宗崎 良太, 澤津橋 基弘, 小幡 聡, 田浦 政彦
    2019 年 40 巻 3 号 p. 199-202
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    高度な嚥下障害や,繰り返す誤嚥性肺炎や,窒息のリスクは,重症心身障害児者のQOLを大きく低下させ,時には生命の危険に直結する重要な問題である。嚥下障害への対応として,食形態の工夫,食事姿勢の工夫,胃ろう造設術があり,繰り返す誤嚥性肺炎や窒息のリスク回避に対しては,喉頭気管分離術がもっとも有効な方法である。最近6年間に,経口摂取困難あるいは繰り返す誤嚥性肺炎に対して,胃ろう造設術(9名),喉頭気管分離術術(10名)が施行され,いずれの症例においても,経鼻胃管からの解放及び誤嚥性肺炎の発症予防が得られた。専門家による評価・治療と,手術施設への転院・術後経過観察に関する患者負担の最小化を両立するためには,複数の診療科・部署と複数の医療機関の相互理解と協力が欠かせない。

  • 椎名 英貴
    2019 年 40 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    重症脳性麻痺児の多くは摂食嚥下に何らかの困難さを有している。摂食嚥下機能の到達レベルは児の重症度により規定され,経口摂取が困難な児の割合も多い。また,発達期の障害であることから援助は長期にわたり,年代により焦点となる問題は変化する。摂食嚥下リハビリテーションの基盤は適切な予後予測と医学的管理にある。リハビリテーションの実際では食事姿勢の設定,食物形態の調整,口腔運動機能へのアプローチが柱となる。異常緊張の低減と食事のための姿勢設定は食事援助の中でも大きな領域を占める。口腔運動機能の過敏性,緊張性咬反射,舌突出,などの神経学的な異常性に対しては症状に合わせた対応を行う。療法士が行う姿勢のコントロール,口腔器官への対応方法を家庭の中で実現するための指導が必要である。実現のためには言語聴覚士のみならず理学・作業療法士との協働,さらには座位保持装置など環境整備の必要性も高い。

  • 澤津橋 基広, 菊池 良和
    2019 年 40 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    嚥下障害患者の紹介や,嚥下評価の依頼があった場合,九州大学病院では,まず,嚥下内視鏡検査を行い,担当医師が必要と判断すれば,嚥下造影検査(VF)を行っている。VFを施行した症例は全て,嚥下カンファレンスにて解析し,手術適応を判断している。成人症例に比べ,小児科や小児外科からの紹介例は,単に嚥下評価の依頼よりも誤嚥防止手術を念頭においた紹介が多いため,手術適応になる患者が多い。この背景には,当科を受診する前に,小児科・小児外科・耳鼻科の担当医間において情報を共有していることが大きい。本論文では,九州大学病院にてVFを行い,嚥下カンファレンスにて検討を行なったのべ2622例のデータベースを元に,小児科及び小児外科から紹介のあった嚥下障害症例(85例)及び嚥下関連手術を行なった症例22例の検討結果を提示し,小児嚥下障害に対する他科との連携や病院間の連携について,九州大学病院の取り組みを紹介する。

ランチョンセミナー
  • 上出 洋介
    2019 年 40 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    ワイドバンドティンパノメトリーは新しい概念のもとに開発された中耳機能検査機で,特に乳幼児の難聴,中でも中耳炎を背景にした難聴に対して有用な機器と考えられる。測定原理は広帯域周波数(クリック音)刺激によって,鼓膜,中耳,耳小骨,内耳に吸収されるエネルギー比率(アブゾーバンス)を算出して鼓膜,中耳の音響物理的特性を求める。臨床応用では計測で得られるピーク圧/無加圧アブゾーバンスの2種類のグラフパターンから滲出性中耳炎の病態診断を行うことができると考えている。

  • 髙木 明
    2019 年 40 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    先天性重度難聴に対する人工内耳の手術年齢は日本では2014年より1歳以上とされているが世界的にはますます低年齢化が進んでいる。低年齢化は生後の脳の発達の見地から望ましいものの円滑な音声言語獲得には術後の母子への適切な介入が必須である。欧米では乳幼児難聴の専門職(Audiologist)が保護者への指導,児への介入を実施し,特に豪州では就学までの適切な介入により大多数が通常校への進学が可能となっている。我が国おいては乳幼児難聴に適切に対応できる専門家は極めて少数である。多くは聾学校幼稚部に在籍する。そして通常校に進級しても中学で聾学校に戻る児が多い。日本の乳幼児難聴への取り組みが今後は医療のみならず,保健・福祉,教育と連携して行われ,かつ,専門家の育成と実践の場の整備が急務であることを述べる。

スイーツセミナー
  • 小渕 千絵
    2019 年 40 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    聴覚情報処理障害(Auditory processing disorder, APD)は,聴力の低下はみられないが,雑音下での聴取など聴取に負荷のかかる状況下で聴取の困難さを示す症状である。APD症状の要因として,聴覚野に限局した器質的障害のある方はほとんどみられず,発達障害の診断に該当する場合や,診断には該当しないが注意や記憶などの認知的な問題,心理的な問題が考えられている。最近では,背景の多様性を考え,聞き取り困難(listening difficulties)とするのが良いのではないかとの議論もみられる。評価においては,APD症状の聴覚特性を把握するための検査だけでなく,背景の要因を検討するための認知や心理的な検査も含めて行うことが必要である。また,支援においては,一般的な聴覚障害児者への手法を応用する。補聴機器の使用を含めた環境調整,認知的なトレーニング,心理的な支援という3つの視点で対処し,症状軽減に向けた個別的な対応が望まれる。

モーニングセミナー
  • 菊池 良和
    2019 年 40 巻 3 号 p. 231-235
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    吃音症の遺伝学的研究は,2010年以降GNPTAB,GNPTG,NAGPA,AP4E1の4つの遺伝子が同定された。その4つの遺伝子は,ライソゾーム酵素輸送経路に関係した遺伝子であることが示唆されている。GNPTAB,GNPTGはムコリピドーシスII, III型の原因遺伝子とされているが,変異の場所が異なり,吃音者でそれらの遺伝子を持っても,ムコリピドーシスII, III型を発症する人はいない。遺伝子が特定されたことにより,遺伝子組み換えの吃音マウスの研究発表があり,また,吃音者において遺伝子保有の有無により言語療法の治療効果の差が示唆された。ライソゾーム酵素輸送経路の障害は脳の白質形成異常をもたらすことも示唆され,今後,遺伝子に基づいた研究が展開していくのだろう。

原著
  • 仲野 敦子, 大島 清史, 朝比奈 紀彦, 大滝 一, 坂 哲郎, 宇高 二良
    2019 年 40 巻 3 号 p. 236-241
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    日本耳鼻咽喉科学会学校保健委員会では,学校医の気管切開・嚥下障害の児童生徒に対する関わりの現状把握と今後の対応を検討するために,2017年7月に学校保健委員長等56名と政令指定都市等の21の教育委員会に対してアンケート調査を実施した。

    学校医7名が担当する学校には気管切開児が在籍していたが,学校協力医として登録していたのは2名に過ぎなかった。その他37名は学校協力医になっても良いと考えていたが,経験や知識の不足や多忙を理由に協力医になることは困難であるとの回答もあった。今回調査した21市区中9市の小学校通常学級に,14市の小学校特別支援級に気管切開児が在籍していた。通常学校では医療的ケアが必要な児の多くは,特別支援学級に在籍していたが,通常学級にも,「気管切開部からの吸引」を必要としている児が16名確認された。教育委員会からは,医療的ケアの指導や検討委員会への参加等を望む回答があった。

  • 木村 優介, 加我 君孝
    2019 年 40 巻 3 号 p. 242-248
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    目的:三半規管無形成5症例の前庭動眼反射と粗大運動発達の獲得および蝸牛奇形の有無とその聴覚機能について検討する。対象:両側三半規管無形成5名を対象とした。5名中4名がCHARGE症候群であった。方法:1.前庭動眼反射の評価2.粗大運動発達の評価3.側頭骨CTによる評価4.聴覚評価。結果:1.回転椅子検査:5名全例で無反応であり,半規管機能低下と判断した。2.頸定の獲得年齢:平均10.2±7.9カ月,独歩:平均30.5±13.4カ月。3.側頭骨CT:蝸牛形態は正常2耳,Cochlear hypoplasia(CH)type I 2耳,CH-type III 4耳,CH-type IV 2耳。4.聴力:3名は両側中等度難聴,2名は両側高度難聴。結論:三半規管の無形成は前庭動眼反射経路の機能低下と粗大運動発達の遅れに関与する。聴覚については,蝸牛奇形・蝸牛神経管・内耳道の狭窄を総合して診断する必要がある。

  • 舩越 うらら, 大塚 雄一郎, 米倉 修二, 岡本 美孝
    2019 年 40 巻 3 号 p. 249-255
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    ワルトン管深部・移行部の唾石に対しては顎下腺全摘術を行う施設が多いが,近年,口内法手術や唾液腺内視鏡手術などの低侵襲手術が報告されている。特に小児・若年者の顎下腺唾石は比較的小さく,低侵襲手術の良い適応である上,保護者の要望も強い。しかし,レーザーがない場合には唾液腺内視鏡手術は5 mm以上の唾石は摘出が困難であり,また,視野の確保が困難な場合や,バスケット鉗子で唾石を確保できない場合など,摘出が困難な症例も多い。一方,口内法では触診不能な小さな唾石は摘出できない上に,舌神経麻痺の危険性がある。そのため,両者を組み合わせたcombined approachなども報告されている。そこで,当院で施行している小児・若年者の顎下腺深部・移行部唾石に対する低侵襲手術(口内法手術と唾液腺内視鏡手術)それぞれの術式の利点や欠点,術式の選択,術後経過について検討した。

  • 青木 俊仁, 伊藤 美幸, 竹山 孝明, 坂本 幸, 島田 亜紀, 宇高 二良, 武田 憲昭
    2019 年 40 巻 3 号 p. 256-263
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    平成23年度から平成28年度のA市の3歳児健診を受診した幼児の構音の誤りと誤り方の経年変化を調査した。構音に誤りのある幼児の割合は平成23年度の59.5%から平成28年度の84.1%に増加していた。3歳6か月前後に完成するとされている/k/と/ɡ/の構音に誤りのある幼児の割合は,平成23年度の24.3%と5.4%から平成28年度の52.3%と23.9%に増加していた。このことから,最近の日本の幼児の構音の獲得が遅れていることが示唆された。/k/と/ɡ/の構音の誤り方に置換や未熟構音に伴う歪みが多く認められ,6年間で増加傾向を示したことに,最近の幼児の口腔習癖に伴う不正咬合,咀嚼能力,手指の協調運動,バランス能力の低下,言語発達の遅れが関与している可能性が考えられた。/k/の側音化構音に伴う歪みが増加していたことに,口呼吸,異常な嚥下癖,口腔習癖の増加,健診に参画する言語聴覚士の構音の誤りの検出精度の向上が関与している可能性が考えられた。

症例報告
  • 栁澤 瞳, 今井 裕弥子, 守本 倫子
    2019 年 40 巻 3 号 p. 264-270
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    2012年から2013年の風疹流行に伴い出生した先天性風疹症候群(CRS)4例に対する経過と言語・コミュニケーション指導について報告する。4例は重度難聴や進行性難聴の他に,白内障,先天性心疾患,発達の遅れなど多様な症状を呈していた。聴力評価では,進行性難聴の可能性があることや視覚障害との重複障害や全般発達の遅れなど複数の問題がみられ,聴力の確定には時間を要した。他覚的検査を交えながら聴力検査を継続することと,重複した問題に応じたコミュニケーション手段や補聴手段の検討が大切である。本症例では,様々な疾患の重複や発達の遅れを認めたが,各症例に合わせた指導を行うことで緩徐に発達を認めている。就学を見据えて継続した支援が必要であり,近隣の療育機関へスムーズに移行ができるよう,感染対策を含めたCRS児に対する理解と支援が重要である。

  • 木村 朱里, 山下 拓, 守本 倫子
    2019 年 40 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    歯ブラシによる咽頭外傷から縦隔気腫を来たした1歳男児例を経験した。

    歯ブラシをくわえたまま転倒し直後は経口摂取可能で出血もなかったが次第に活気が低下してきたため総合病院を受診した。喉頭内視鏡所見では上咽頭に血液付着するのみであったが,頸部単純CTにて咽頭後間隙から縦隔まで進展する気腫が認められたため当院へ転院となった。当院到着時は意識清明であり呼吸窮迫症状も認めなかったが,徐々に活気が低下してきた。全身状態のさらなる悪化や,啼泣による気腫拡大や気道狭窄を危惧し気管挿管を行った。直後に喉頭内視鏡を行ったところ,アデノイド直下の咽頭後壁の腫脹を認め数分の間に急激に喉頭浮腫が増強し声門が全く見えなくなった。鎮静・人工呼吸管理の上,抗菌薬による保存的加療を行い受傷後7日目に喉頭浮腫改善を確認し19日目に退院した。

    小児の場合,軽症と思われる咽頭外傷においても重篤な状態に陥る危険性があり,特に縦隔気腫に至った症例は急激な呼吸状態悪化の可能性を念頭におき迅速に挿管管理が出来る体勢を整えておくべきと考えた。

  • 井上 翔太郎, 神吉 直宙, 久呉 真章
    2019 年 40 巻 3 号 p. 278-282
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    急性中耳炎の頭蓋内合併症は稀だが致死率も高く神経学的後遺症を残す場合もあり早期の診断と治療が重要である。今回急性中耳炎にS状静脈洞血栓症を合併した症例を経験した。症例は11歳の女児で受診前日に急性中耳炎と診断され経口抗菌薬を処方されたが,その後嘔気・頭痛が増強し当院を受診した。発熱なく意識清明で髄膜刺激徴候はなく,CTにて右中耳炎・乳様突起炎と診断し広域抗菌薬の経静脈投与を開始した。翌日MRIで右S状静脈洞血栓症を認め,ヘパリンNaの投与も開始した。抗凝固療法は計7日間,抗菌薬投与は計14日間行った。第26病日のMRIで血栓は消失し,神経学的後遺症なく経過した。急性中耳炎で頭痛や嘔吐が強い場合,本症も念頭に置く必要がある。小児でも成人と同様に広域抗菌薬,抗凝固療法による治療が有用と考えられた。

  • 佐藤 里奈, 光澤 博昭, 黒瀬 誠, 高野 賢一
    2019 年 40 巻 3 号 p. 283-286
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    下咽頭梨状窩瘻は下咽頭梨状窩より甲状腺近傍に向かう瘻管であり,幼少期以降に反復する頸部感染を契機に発見されることが多い。新生児期に発症した場合(以下,新生児梨状窩瘻)は,頸部腫脹や呼吸症状が主訴となる。根治治療は頸部外切開による瘻管摘出術が第一選択とされるが,近年では経口腔操作による瘻孔焼灼術が行われ,頸部外切開手術を回避する例が報告されている。しかし本邦において新生児梨状窩瘻に瘻孔焼灼術を実施した報告はない。今回我々は,生後5日で急速に増大する左頸部腫瘤と呼吸困難を生じた新生児梨状窩瘻に対し,経口腔的化学的瘻孔焼灼術にて治療を行った症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

  • 酒井 あや, 川上 理, 三輪 高喜
    2019 年 40 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    小児睡眠時無呼吸症(OSA)の増悪因子の一つに上気道感染が挙げられる。OSAの保存加療中に伝染性単核球症(IM)を発症し,呼吸障害が著明に増悪した症例を報告する。2歳11ヶ月の女児,現病歴として半年前よりOSA症状を認め,初診時現症は,アデノイドは高度,口蓋扁桃はBrodsky 3度,簡易睡眠検査ではODI3%は23回/時,最低酸素飽和度は80%であった。アデノイド,口蓋扁桃肥大によるOSAと診断した。ステロイド点鼻を投与し,3歳になる2ヶ月後にアデノイド切除,口蓋扁桃摘出術(AT)を予定した。初診後8日目に39.4度の発熱,咽頭痛,両側耳下部鶏卵大腫脹,覚醒時喘鳴を認め,小児科に入院した。入院後5日目にVCA-IgM抗体が陽性であったことによりIMの合併が判明し,OSAの増悪につながったと診断した。経鼻高流量療法を行い,呼吸状態が改善し,入院後22日目にATを施行した。術後,症状は改善し,経過良好である。

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