小児耳鼻咽喉科
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症例報告
急性中耳炎に乳様突起炎,S状静脈洞血栓症を合併した11歳女児の一例
井上 翔太郎神吉 直宙久呉 真章
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2019 年 40 巻 3 号 p. 278-282

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抄録

急性中耳炎の頭蓋内合併症は稀だが致死率も高く神経学的後遺症を残す場合もあり早期の診断と治療が重要である。今回急性中耳炎にS状静脈洞血栓症を合併した症例を経験した。症例は11歳の女児で受診前日に急性中耳炎と診断され経口抗菌薬を処方されたが,その後嘔気・頭痛が増強し当院を受診した。発熱なく意識清明で髄膜刺激徴候はなく,CTにて右中耳炎・乳様突起炎と診断し広域抗菌薬の経静脈投与を開始した。翌日MRIで右S状静脈洞血栓症を認め,ヘパリンNaの投与も開始した。抗凝固療法は計7日間,抗菌薬投与は計14日間行った。第26病日のMRIで血栓は消失し,神経学的後遺症なく経過した。急性中耳炎で頭痛や嘔吐が強い場合,本症も念頭に置く必要がある。小児でも成人と同様に広域抗菌薬,抗凝固療法による治療が有用と考えられた。

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© 2019 日本小児耳鼻咽喉科学会
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