2021 年 42 巻 1 号 p. 32-36
感染症において原因菌の薬剤耐性化は死亡率の上昇に寄与する深刻な問題である。小児における抗菌薬処方の多くは軽症の気道感染症に対する広域抗菌薬であり,不適切な使用が薬剤耐性菌の問題を助長している。処方医は小児科医と耳鼻科医が同等に多く我々の姿勢が問われている。対策の一環として,乳幼児を対象とした「抗微生物薬適正使用の手引き(第2版)」が2019年に発行された。手引きは気道感染症,中耳炎,急性下痢症について抗菌薬の必要性の有無に関する基準を設け,初期治療における第一選択薬を提示したものであり,学会のガイドラインと原則は同一である。適正使用を推進する上では,小児耳鼻咽喉科感染症の病原体疫学を考慮して抗菌薬の不使用やアモキシシリンを軸とした診療が必要となる。そのうえで患者ごとに,耐性菌感染症を考慮した第二選択薬を検討する必要があり,診療の現場においては見極めの力やフォローアップが求められる。