2021 年 42 巻 1 号 p. 55-60
小児難聴の中で身体障害者に該当しない軽度・中等度難聴児は約30%を占める。2010年から導入された軽度・中等度難聴児への補聴器購入助成制度は現在すべての都道府県で実施され,その恩恵により補聴器を購入する児は増加している。ただし補聴器を装用しても正常聴力児と同等の聴取が可能なわけではなく,インクルーシブ教育を受ける中で問題に直面する児は多い。その問題は言語発達遅滞や学力の低下,友人とのコミュニケーション,心理面など多岐にわたり,年齢が上がるにつれて顕著化,複雑化する。それらの課題に対して,聴取の環境調整や視覚情報の提示,教育面,心理・社会面も踏まえて個別に介入や支援を行うこと,教育者や周囲の理解を啓蒙することが必要である。難聴児が成長し社会参加をするに当たり必要なセルフアドボカシースキルを確立できるような指導や支援を行うべきある。