反復性中耳炎は,通常の急性中耳炎とは異なり抗菌薬内服のみでのコントロールが困難な疾患である.抗菌薬反復投与,鼓膜チューブ留置術が選択されることが多いが,原因菌の薬剤耐性化や鼓膜穿孔残存などの合併症が問題となる.十全大補湯の治療効果を検討することを目的に2012年1月から2022年12月の期間に十全大補湯の投与をうけた反復性中耳炎小児患者14例を対象に検討を行った.十全大補湯投与前の急性中耳炎罹患頻度は平均1.31回/月であり,投与開始後1~4週では平均0.33回,5~8週では平均0.17回,9~12週では平均0.08回,12週間では平均0.58回であった.全例において12週間投与により急性中耳炎罹患頻度は減少し,治療前平均1.31/月と比べ,十全大補湯12週投与中は0.19回/月(p=0.002)と有意に減少した.反復性中耳炎に対して十全大補湯を併用することで侵襲的な治療である鼓膜チューブ留置術を回避できる可能性がある.