小児耳鼻咽喉科
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特別講演
こどもの気道異物を減らすには
山中 龍宏
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2024 年 45 巻 2 号 p. 49-54

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Abstract

乳幼児を中心に,食べ物による誤嚥,窒息事故が起こり続けている.国の保育管理下のガイドラインで危険な食べ物と指摘され,予防するための調理法が明記されているにもかかわらず,同じ窒息死が起こり続けている.保育管理下で窒息死が起こった場合,検証委員会を設置して,検証報告書を国に提出することが義務付けられているが,その報告書を見ると,保育士の心構えだけが強調されていて予防にはつながっていない.こどもの窒息を予防するためには,食べ物のサイズ,物性値,こども側の要因などの詳細な情報を収集する「窒息登録システム」を構築する必要がある.また,ピーナッツの袋に「5歳未満の子どもには食べさせないでください」という表記を企業に依頼したり,テレビコマーシャルで,丸のままのミニトマトの映像を流している食品会社に不適切な映像であることを指摘して,映像を変更してもらうなどアドボカシー活動を行うことも必要である.

事故によるこどもの傷害は多発している.死亡数は減少傾向にあるが,日本スポーツ振興センターの「災害共済給付」のデータ,東京消防庁の「救急搬送データから見る日常生活事故の実態」のこどものデータを見ると,毎年,ほぼ同じ傷害発生率で減少傾向はみられない.

傷害の中でも,窒息は重傷度が高い傷害である.窒息の原因には,「鼻や口の閉塞」,「気道の圧迫による閉塞」,「気道内異物による閉塞」,「胸郭部の圧迫による呼吸運動障害」などがあるが,主に耳鼻咽喉科医が対応するものは気道異物である.今回,最初に傷害予防の原則について述べ,その後,食べ物による気道異物を中心に,その実態と気道異物を減らすにはどうしたらよいかについて述べる.

事故による傷害の位置づけ

事故は,1)事故が起こる前,2)事故が起こった時,3)事故による傷害が起こった後,4)グリーフ・ケアの4つの相に分けて考える必要がある.この4つを合わせたものが傷害対策で,もっとも大切で経済的にも優れたアプローチは「予防」である.傷害予防において優先度が高いのは,1)重傷度が高く,後遺症を残す確率が高い,2)発生頻度が高い,3)増加している,4)具体的な解決方法がある事故である1)

傷害予防の原則

傷害について,「変えたいもの」,「変えられないもの」,「変えられるもの」の3つに分けて考える.変えたいものは,重傷度が高い事故の発生数などであるが,これは直接変えることはできない.こどもの年齢,発達段階,天候,季節,時間などは事故の予防を考える時に必要な情報であるが,これらも変えることはできない.製品や環境,製品の配置などは変えることができる.傷害予防とは,事故に関わる要因の中から「変えられるものを見つけ,変えられるものを変えることによって,変えたいものの発生頻度や重傷度を変えること」である.

この変えられるものについて,1)製品・環境デザイン(Environment)の改善,2)教育(Education),3)法規制(Enforcement)の3つで取り組む.英語の頭文字をとって「3Eアプローチ」と呼ばれている1)

こどもの事故が多発していることを受けて,第25期日本学術会議の「子どもの成育環境分科会」で,こどものケガを減らすためのシステムについて検討し,2023年9月に見解を出した2)

気道異物の実態

気道異物を引き起こす食べ物としては,ピーナッツなどの乾燥したナッツ類,ピーナッツを含んだせんべいやチョコレート,枝豆などが多い.一口サイズの食べ物で,ある程度の硬さがあるミニトマト,大粒のぶどう,みたらし団子,白玉団子,こんにゃく入りゼリー,ウズラの卵,ホットドッグのソーセージ,お菓子パン,タピオカなどによる窒息もある.硬い小片になる生のニンジン,セロリ,リンゴ片などでも窒息する.

食べ物以外のものでは,スーパーボール,分解できる玩具の部品,風船などが知られている.

食べ方では,仰臥位,歩きながら,遊びながら物を食べる,小さな食物塊やおもちゃなどを放り上げて口で受けるような食べ方,早食い競争などが知られている.

これらについて,日本小児科学会や消費者庁などからいろいろな資料や動画が公開されている3,4)

保育管理下の窒息死

保育管理下で事故死が発生すると大問題になる.2016年4月以降,保育管理下で死亡事故が起こった場合は,市町村で有識者による検証委員会を設置して,その検討結果を国に報告することが義務づけられた.同時に,保育管理下の事故を予防するために「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」が発表された5).その21–23ページには,給食で使用を避けるべき食材などのリストが示され,備考欄には具体的な調理法も示されている.

検証報告書の問題点

検証報告書の一例として,リンゴ片による窒息死(1歳2か月男児,2020年2月12日に死亡)の報告書を見てみよう6).2021年1月14日に検証報告書が公表された.この報告書の提言を見ると,「こどもの発達段階に合わせた保育,給食管理体制の確保,危機管理意識の向上,保育の質の向上に向けた取り組み」など一般的なことが羅列されているだけで,「リンゴ」に関する記載はどこにもない.その報告書を取り上げたニュース(1月16日)のタイトルは『「給食時間内に食べさせる」暗黙ルール』となっており,担当した記者は,「長年にわたり,好き嫌いをせず,時間内に全量食べきることが定着し,こども一人一人のペース等への配慮よりも優先されていたことが事故の背景にあった」と理解してタイトルをつけたと思われる.このような提言を出しても,あまりに漠然としていて,具体的に何をしたらいいのかわからない.一番大切なことは,こどもの月齢,咀嚼機能に合ったりんごの調理法を明らかにして周知徹底することである.

内閣府などから出された事故防止のガイドライン5)に危険な食べ物,その調理法が具体的に書かれているにもかかわらず,保育現場でそれが実施されていない.総務省による行政評価で,「対策の重要性の認識不足や,実施方法に関する情報不足などを理由に,一部の施設においてこれらの対策が実施されていない状況がみられる」(2018年11月勧告)と指摘があり,2022年1月,このガイドラインに沿った保育が現場で行われているかどうかの調査が行われた7)

重大事故が発生しやすい場面に応じた事故防止対策の2021年12月時点の取り組み状況について,全国の約55000か所の教育・保育施設等を対象に,WEB上に作成したアンケート画面に回答を入力する調査が行われた.アンケートの回収は15980件(約30%)であった.

一例として,豆まき行事の状況についてみると,「豆まき,乾いた豆の提供のどちらも実施した」施設は5.1%,「豆まきは実施したが,豆は提供せず,豆まきは袋に入った状態の豆を使用した」施設は16.9%,合わせて22%の施設で危険性がある節分行事が行われていた.

NPO法人Safe Kids Japan(SKJ)のアドボカシー活動

医療関係者の仕事は,こどもたちの健康や安全を推進することである.食べ物などによる気道異物は,誰でも,いつでも,どこでも起こる可能性があり,医療機関の外でもその予防に取り組む必要がある.日常生活の中で,危険性がはっきりとわかっているにもかかわらず,適切に対応されていないことがある.それらの危険性を避けるための活動は「アドボカシー」と位置付けることができる.

事例1:SKJでは,ホームページ上に「聞かせてください」という投稿欄を設け,ケガをした状況の報告や相談を受け付けている.この欄に2023年4月12日に保護者から投稿があった.「今年度よりこどもが幼稚園に入園したのですが,給食にカットしていない状態のミニトマトやぶどう,カップゼリーなど危険と言われているものが出されています.一度幼稚園に申し入れをしましたが全く無視され,ついに給食が始まってしまいました.かねてより,こどもの事故には注意し,ミニトマトやぶどうは必ず切って出しており,ゼリーも細かくしていました.死亡事故が起きてからでは遅いし,何よりも命がかかっていることなのに取りあって貰えず本当に困っています.どうかお力添えいただけないでしょうか.怖くて怖くて仕方がないです」

この投稿を受け,SKJから,この幼稚園が設置されている市の公式ホームページにメールを出した.「幼稚園の給食について,保護者からガイドラインが守られていないという投稿があった」ことを伝え,対処をお願いし,同時に市の私立幼稚園連合会にも手紙を送った.

一週間後に市の担当課よりSKJに回答があり,「市が施設監査を担当している教育・保育施設については,誤嚥・窒息事故の防止に関する通知は適宜行っており,食事の提供状況を確認している.幼稚園の施設監査を担当しているのは県」という回答が来た.そこで,県のホームページの問い合わせ欄に同じメールを送った.

三週間後,担当課より返信があり,「当方では,2023年1月に,県内全私立幼稚園及び幼稚園型認定こども園に対し,国の事務連絡『食品等の誤嚥による子どもの窒息事故の予防に向けた注意喚起について』を送付し,注意喚起をしている.2023年4月にも,改めて当方より県内全私立幼稚園及び幼稚園型認定こども園へ同通知を送付し,再度注意喚起を図っている」という回答が来た.

そこでSKJから,「国の事務連絡を通知していただいたとのことですが,保護者の方から当会に最初に連絡をいただいたのは4月12日で,この幼稚園では,貴課からの通知を受け取っていたにもかかわらず,その通知やガイドライン等を無視して給食を提供しているということになる.貴課は,通知が届いたかどうか,そして通知によってそれが改善されたかどうかを確認していただく必要がある.給食は日々提供されていますので,この問題は今日,明日にも解決しなければならない」とメールした.

6月1日に担当課より,「具体的な幼稚園名を教えてほしい」との回答があり,保護者に幼稚園名を伝えることの許可をもらい,担当課に伝えた.6月12日に担当課より返信があり,「当方から幼稚園へ連絡し,ガイドラインに掲載されている誤嚥・窒息につながりやすい食べ物のうち,現在幼稚園の給食メニューに入っているものは即日メニューから外す,それ以外にも誤嚥・窒息事故の恐れがある食品は使用を避けることを確認していただいた」いう回答があった.

このような状況が現実であり,今後も医療関係者が取り組んでいく必要があることがわかる.

事例2:2020年2月3日,松江市内の保育所型認定こども園で,4歳4か月の男児が節分の豆まき行事の最中,炒り大豆による気道閉塞で,同日,死亡した8)

50年以上前から,豆まきの豆による窒息死は起こっている.未だに死亡例が発生したことに愕然とし,豆の袋に危険性について記載してもらうことを思いついた.2020年4月,SKJと子どもの事故予防地方議員連盟から「4歳未満の子どもには食べさせないでください」と豆の袋に表記してほしいという要望書を日本ピーナッツ協会に送り,そこに加盟している企業に依頼してもらった.その結果,2020年12月から,それまでの「お子さまがのどにつまらせないよう必ずそばで見守ってあげてください」という表記から,一部の企業では,赤い字で「4歳未満のお子様には食べさせないでください」と表記されるようになった.

事例3:2020年9月,幼稚園の給食で出されたピオーネ(直径約3センチ)で4歳児が窒息死した.SKJでは,お店で販売されているミニトマトやピオーネの包装紙に貼ってもらうシールを作成して配布した(図12).

図1 NPO法人Safe Kids Japanが作成したミニトマトやぶどうの包装に貼るシール

シールの直径は,日本人3歳児の最大開口口径平均値の39 mm.QRコードで,窒息の危険性の情報を提供.

図2 実際の店頭の状況

事例4:ある食品会社のテレビコマーシャルで,幼児のお皿にカットされていないミニトマトが映っているシーンがあった.誤嚥や窒息を引き起こす可能性があり,国のガイドラインでもミニトマトはカットするよう指摘されていると会社にメールを出した.すぐに回答があり,お皿の上のミニトマトが削除された映像に変更された.

誤嚥,窒息の現状

これまで,気道異物の予防について,いろいろ取り組まれてきたが,同じ誤嚥,窒息が発生し続けているということは,現在,対策と考えられているものは効果がないと認識する必要がある.

こどもの口に入る大きさの物であれば,どんなものでも誤嚥,窒息を引き起こす可能性がある.3歳以下のこどもでは,直径が4.5センチメートル以下のものは口に入る.

食べ物による誤嚥や窒息の発生については,こども側の要因(乳歯の生え具合,飲み込み方,噛む力や,早食い,小さな食物塊を放り上げて口で受けるような食べ方などのこどもの行動)と,食べ物側の要因(表面の滑らかさ,粘着性,弾力性,噛み切りにくさ,大きさ,形状など)があり,これらの危険因子はいろいろなところで指摘されている35)が,それが現場に周知されていない.

今後の取り組み

食べ物によるこどもの窒息を考える場合,9歳までと,10歳以上に分けて考える必要がある.10歳以上であれば,安全な食べ方をこどもに教えることができるが,9歳までのこどもに食べ方の指導をしても有効ではなく,食べ物そのものについて検討する必要がある.

i)必要な情報を記録し,収集する

食べ物による乳幼児の窒息について,これまでに行われてきた検証では不十分である.最も重要な情報は,窒息を引き起こした食べ物の情報である.リンゴ片による窒息であれば,リンゴの種類,その調理法,例えばどれくらいの大きさに切ったか,どういうおろし金ですりおろしたのかを知る必要がある.情報は,文字だけで記録するのではなく,写真や計測値が必要である.例えば「すりおろしたリンゴ」(2023年4月,鹿児島県姶良市の保育所の6か月児の窒息死例)と新聞記事に書いてあったが,よく調べてみると,径が7–8ミリの穴が開いたすりおろし器を使ってすりおろしたとのこと,そうであれば,リンゴの小片ができて,6か月児の気管に詰まる可能性がある.同じ種類のリンゴを,同じすりおろし器で調理して再現することは簡単にできる.それを写真に撮り,スマホの3Dスキャナー機能でリンゴ片の計測値を得ることもできる.本人の口から詰まったものを取り出すことができた場合は,それも写真に撮り,計測しておく.

次に重要なのは,こどもの情報である.月齢・年齢,身長・体重,本人の小指の直径(本人の気管の太さに相当),普段の嚥下の状況,発症時の様子(泣き切った直後など)などの情報が必要である.

さらに,窒息を引き起こした食べ物の物性値の測定も必要である9).嚥下困難者向け食品の評価として,食材の硬さ,付着性,凝集性と呼ばれる物性値が用いられている.それらを参考に食べ物の客観的な評価尺度を開発し,窒息を引き起こした食べ物について計測する必要がある.

手作りの食べ物による窒息であっても,原材料の量,調理法を詳しく記載しておく必要があり,これらのデータを一か所に集め,「食べ物による窒息データベース」として,いつでも,誰でも見ることができるように整備する必要がある.

ii)嚥下シミュレーションの利用

嚥下について,ヒトを使って誤嚥,窒息の再現実験をすることはできない.そこで,コンピュータ上で嚥下のシミュレーションが検討されている.食べ物による窒息のデータを活用して,窒息する状況をコンピュータ上で再現できれば,それぞれの食べ物についてある程度の危険性を判定することができるようになるのではないかと期待している.

いずれは,新しい食品が開発された場合,このシステムに形状値や物性値を入れてリスクを評価することができるようになるといいと考えている.

iii)いろいろな組織の役割

食べ物による乳幼児の窒息を予防するためには,食べ物の情報に加え,いろいろな機関や組織の取組みも必要となる.

① 医療機関の役割

医療機関の役割については,上述したように,保護者や保育士から誤嚥や窒息が発生した状況を詳しく聞いて記録し,その情報を公開する必要がある.

② 行政の役割

保育管理下で重大事故が発生すると,こども家庭庁をはじめ,各自治体の担当課から注意喚起の事務連絡が度々行われているが,1か月もたたないうちに,また同じ事故が発生している.行政は「うちの担当ではない」と関知しないか,「通知を出したこと」で責任を果たしたと考えているが,そのような対応では予防できない.

国は,地方自治体に任せるのではなく,運輸安全委員会のシステムを参考に,食べ物による窒息の専門家を登録しておき,重大事故が起こった場合は専門家を現地に派遣して検討し,具体的な予防策を出す役割がある.2022年1月,保育管理下で重大事故が発生しやすい状況について全国調査が行われたが,この調査は数年おきに行っていく必要がある7)

保護者にとって,こどもが通っている園に対して,給食で出された食べ物の危険性を直接訴えることは大きな負担となる.そこで,園を管轄している地方自治体の担当課に相談窓口を設けて対応するとよい.また,自治体は,園に対して抜き打ち監査を実施することも必要である.

③ 司法の対応

保育管理下で重大事故が発生すると,刑事事件としてこどものそばにいた保育士や園長の責任が問われ,民事事件として賠償金の請求が行われているが,このような対応では次の事故を防ぐことはできない.当事者以外の保育士は,自分の周りでそのような事故が起こるとは考えておらず,有罪判決が出ても,それは「他人事」でしかない.司法では,判決が予防につながったかどうかの評価システムがない.

④ メディアの役割

重傷の事故が起こると,ニュースで大きく取り上げられるが,二日もすると消えてしまう.食べ物による窒息のニュースを報道するときは,データベースを検索して,これまでにも同じ窒息が起こっていることを報道し,現在行われている予防策の問題点を指摘する必要がある.また,重傷例の1年後,3年後の状況を詳しく取材して,気道異物の悲惨さ,予防の必要性を社会に伝える必要がある.

⑤ 日々,いろいろな周知活動を

食べ物による窒息の危険性を周知するためには,あらゆる機会をとらえ,あらゆる方法で,継続的に取り組むことが大切である.危険性に気づいたら,すぐに対応する「モグラたたき」が必要となる.

・保育の場で,ミニトマトや大粒のぶどうがそのまま提供されていることに保護者が気づいたら,園長に訴える,あるいは市の担当課に連絡する.

・食べ物の危険性については,保育士だけでなく,配食サービス事業者,栄養士,保護者,祖父母などにも周知する必要がある.

・2006年7月,静岡県東伊豆町の私立保育園で,園庭で栽培していたミニトマトを口に入れて窒息死した例がある.教育現場にミニトマトの苗の配布を行っている企業がある.幼稚園などには配布されていないようだが,危険性が低い野菜の苗の配布に変更すべきである10)

・絵本に描かれているお弁当の絵を見ると,ミニトマトや大粒のぶどうなどがそのまま描かれていることがある.これらはカットした絵に変更すべきである.

・お弁当の日に,こどもの弁当にミニトマトがそのまま入っていたら,保育士から保護者に「切って与えて」とすすめる.

・最近では,保育士の国家試験に窒息を引き起こす食べ物の試験問題が出るようになった.

・園には検食簿があるが,その代わりとして,提供した食事の写真を撮り,毎日,園のホームページに載せるとよい.そうすれば,保護者や行政は食べ物の安全をチェックすることができ,その映像をAIで自動的にチェックすれば,危険性が高い食べ物を発見することができる.

おわりに

これまで,食べ物による窒息は「本人の食べ方の問題」,「保育の問題」とされてきたが,「食べ物の問題」としてとらえないと予防にはつながらない.保育管理下だけで食べ物による窒息が発生しているわけではなく,一般家庭でも同じことが起こっている.一般家庭で起こった場合はニュースにならないだけである.また窒息によって低酸素性脳症となり,数年後に肺炎で死亡した場合もニュースにはならず,死亡統計では肺炎による死亡となっている.

誰もが食べ物による窒息の危険性についての知識を持っている必要がある.その知識を社会に普及させるために,いろいろな機会,手法を使って継続的に啓発していくことが必要である.

今後,耳鼻咽喉科医,小児科医,小児外科医などは連携して,各学会誌に窒息事例の投稿欄を設置し,国レベルの気道異物の登録制度を創設し,食品の物性値のデータベースを作成して,気道異物の発生機序の解明,ならびに予防に取り組むことが望ましい.

利益相反に該当する事項:なし

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