抄録
床施工に酢酸ビニル樹脂系接着剤(以下,酢ビ接着剤)を使用した木造一戸建新築住宅において室内空気中の揮発性有機化合物及びアルデヒド類(以下,揮発性物質)を調査したところ,濃度が高かったのは,アセトアルデヒド,ヘキサナール,ノナナール,酢酸,アセトン,テルペン類(α-ピネン,β-ピネン,リモネン),パラジクロロベンゼンであった。これらについて発生源を調べたところ,パラジクロロベンゼンを除き,床下空間が共通の発生場所であると推察された。そこで硬化した酢ビ接着剤から発生する揮発性物質を調査したところ,樹脂の分解により主に酢酸,アセトアルデヒド,アセトン,酢酸ビニルモノマーが発生し,その発生量は湿度の上昇とともに増加した。また,床下が閉鎖的な空間であることから,硬化酢ビ接着剤から発生した揮発性物質をテドラーバッグに取り分けて濃度変化を調べたところ,実験開始直後に比べて7日間経過後には,アセトアルデヒド及びアセトンについて2.5倍の濃度増加が見られた。本新築住宅の床構造材に使用されていた杉はアセトアルデヒド,ヘキサナール,ノナナール,アセトン,テルペン類を放散することから,アセトアルデヒド及びアセトンは,構造材及び酢ビ接着剤の両方から発生して床下空間で滞留中にその濃度を増し,他の揮発性物質とともに内装材の隙間から室内に流入したと推察された。