抄録
プラスチックの可塑剤として使われている準揮発性有機化合物(SVOC)であるフタル酸ジ-n-ブチル(DBP),フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)およびフタル酸ジエチル(DEP)について室内環境中での存在形態を知るための捕集方法を検討し,ガラス繊維フィルター1枚とC18多孔性フッ素樹脂フィルター2枚を用い,壁紙のある部屋で実環境測定を行った。DEP,DBPおよびDEHPの室内の総濃度は1 μg/m3のオーダーであったが,分子量の小さいDEPは99%以上がガス態,分子量の大きいDEHPは60%以上が粒子態として捕集され,中間のDBPは大部分ガス態であったが,低室温では粒子態の存在割合が増加する傾向が見られた。また,拡散膜を使用せず風防を持つ拡散取り込み速度の大きい自製のSVOC用パッシブサンプラーについてアクティブサンプラーと並行測定を行い,DEP,DBPおよびDEHPの拡散取り込み速度を求めた。さらに拡散係数推算式から求めた拡散係数を用いて算出した理論拡散取り込み速度と比較した。その結果,ガス態のDEPとDBPはほぼ一致したが,別の測定で気流の拡散取り込み速度への影響も確認されたので,適用性についてはさらに検討する必要がある。