室内環境
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14 巻, 1 号
室内環境
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原著論文
  • 吉川 彩, 野崎 淳夫, 成田 泰章
    2011 年 14 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では消臭剤の噴霧量,環境条件,噴霧方法について検討し,より実用的な試験評価法を提案した。また,新たな試験法を用いて,噴霧器を統一し,消臭液におけるホルムアルデヒドとVOCの除去性能を試験的に把握した。試験においては,ガス状汚染物質(ホルムアルデヒドとVOC)の初期濃度,環境条件をある一定のレベルに統一した。なお,消臭剤の噴霧は,製品記載の方法で行った。本試験では一般量販店で購入した6種類の消臭液(ホルムアルデヒド除去試験は2種類のみ)と,その性能を評価するためにコントロールとして精製水を用いた。
    消臭液のホルムアルデヒド除去性能(相当換気量Qeq[m3/h])を求めた結果,35種類の植物抽出エキスを主成分とする消臭液(1),フィトンチッドを主成分とする消臭液(2)のホルムアルデヒド相当換気量は,それぞれ0.10,0.06 m3/hであり,精製水の相当換気量(0.28 m3/h)よりも小さい値であった。この値は最新の空気清浄機におけるホルムアルデヒド相当換気量(Qeq=99.6 m3/h)と比較しても,非常に小さい値となった。本研究で対象とした消臭剤は液体であるため,親水性物質であるホルムアルデヒドの除去効果が期待されたが,精製水のみを噴霧した場合でも,大きな室内ガス状汚染物質濃度の低減効果は認められなかった。
    また,消臭液のVOC相当換気量(TVOC換算値)は0.40~1.11 m3/hの範囲にあった。特に消臭液(4)のVOC相当換気量(TVOC換算値)が最も大きく,精製水の相当換気量(Qeq=0.16 m3/h)の約6.9倍であった。
    更に,VOC物質毎の除去性能を求めた結果,各消臭液は,17物質のうち6~11物質に対して除去効果が認められた。最も多くの物質を除去していたのは,ヒノキとユーカリの精油を主成分とする消臭液(5)であり,その相当換気量の平均は0.91 m3/hと比較的小さいが,有効成分含有率を上げることにより増大することが期待される。
    各消臭液の物質別相当換気量は,平均で0.44~3.85 m3/hの範囲にあり,最も大きな相当換気量を示したのは酵素を主成分とする消臭液(3)であった。しかしながら,相当換気量はガス状汚染物質の初期濃度,消臭剤の噴霧量や他の測定条件によって値は異なるため,これらの更なる検討が求められる。
  • アブラト メリキザット, 堀 雅宏
    2011 年 14 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    プラスチックの可塑剤として使われている準揮発性有機化合物(SVOC)であるフタル酸ジ-n-ブチル(DBP),フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)およびフタル酸ジエチル(DEP)について室内環境中での存在形態を知るための捕集方法を検討し,ガラス繊維フィルター1枚とC18多孔性フッ素樹脂フィルター2枚を用い,壁紙のある部屋で実環境測定を行った。DEP,DBPおよびDEHPの室内の総濃度は1 μg/m3のオーダーであったが,分子量の小さいDEPは99%以上がガス態,分子量の大きいDEHPは60%以上が粒子態として捕集され,中間のDBPは大部分ガス態であったが,低室温では粒子態の存在割合が増加する傾向が見られた。また,拡散膜を使用せず風防を持つ拡散取り込み速度の大きい自製のSVOC用パッシブサンプラーについてアクティブサンプラーと並行測定を行い,DEP,DBPおよびDEHPの拡散取り込み速度を求めた。さらに拡散係数推算式から求めた拡散係数を用いて算出した理論拡散取り込み速度と比較した。その結果,ガス態のDEPとDBPはほぼ一致したが,別の測定で気流の拡散取り込み速度への影響も確認されたので,適用性についてはさらに検討する必要がある。
  • 村田 真一郎, 関根 嘉香, 佛願 道男
    2011 年 14 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,家庭用冷蔵庫は大型化に加え,省エネ対策の一つとして,気密性を高める方法が検討されている。その一方で家庭用冷蔵庫の庫内にはエチレン,悪臭物質,カルボニル化合物をはじめとする化学物質の存在が確認されている。冷蔵庫の大型化,冷気漏れ対策が進むことによってこれらのガス状物質の庫内空気中濃度が高くなる可能性があり,食品の鮮度への影響,食味や風味の劣化,悪臭,もしくは庫内空気の吸入による健康影響の原因になることが懸念される。庫内に存在するガス状物質の挙動を把握するにあたり,冷蔵庫の漏気・換気量は重要なパラメーターとなるが,これに関する調査報告は見つからなかった。そこで筆者らは住宅の換気量測定に用いられているトレーサーガス法として,二酸化炭素(CO2)減衰法,およびヘキサフルオロベンゼン-パッシブ・サンプラー(HxFB-PS)法の適用を検討した。測定対象は,総容積225 Lの家庭用冷蔵庫とした。はじめに強制排気によって換気回数を0.2,0.3及び0.4回/hに設定した。その結果,両方法の設定値に対する測定値の相対誤差は2~30%であった。次にドアを閉じた冷蔵庫の漏気回数を測定した結果,CO2減衰法で0.18回/h,HxFB-PS法で0.21回/hとなり,両方法の測定結果に有意差は認められなかった。このことから,両方法とも冷蔵庫の漏気・換気回数測定に適用できることが示された。しかし,CO2減衰法はガスの減衰速度が速いため,ドアの開閉を伴う冷蔵庫の換気量測定は困難である可能性が示唆された。そこでドアの開閉を伴う冷蔵庫の換気回数をHxFB-PS法を用いて行った。ドアの開閉はJIS C 9801試験法に従い1日あたり冷蔵室35回,冷凍室8回とした。その結果,使用時を想定した冷蔵庫の換気回数は0.36回/hとなり,ドアの開閉を行わない場合の2倍程度であることがわかった。
講座
調査資料
  • 大貫 文, 齋藤 育江, 多田 宇宏, 保坂 三継, 中江 大
    2011 年 14 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,平成17年及び平成18年に,東京都内の26オフィスビルにおいて,空気中のたばこ煙由来化学物質濃度を測定した。空気の採取は,(a)喫煙室,(b)喫煙室近傍の非喫煙場所,(c)事務室等の非喫煙室で行った。測定化学物質は,ニコチン,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アセトン,プロピオンアルデヒド,トルエン,ベンゼン,浮遊粉じん(PM)及び一酸化炭素(CO)であった。
    調査の結果,ニコチン濃度の最大値は,(a)267 μg/m3,(b)16.7 μg/m3,(c)1.2 μg/m3,検出率は(a)100%,(b)38%,(c)4%であった。
    非喫煙場所からニコチンが検出された原因としては,たばこ煙が喫煙室から漏れたことや,喫煙者に付着し喫煙室外へ運ばれた可能性等が考えられた。
    PM及びCO濃度とニコチン濃度との関連について,喫煙室においては,比較的強い相関が見られ,PM及びCOの濃度を指標として,室内空気の清浄化を図ることが可能と推察された。一方,喫煙室近傍の非喫煙場所においては,喫煙室と異なり相関が弱く,PM及びCOの濃度からニコチン濃度を推測することが困難であることが判明した。
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