室内環境
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原著論文
高齢者施設における冬期の温度,湿度,CO2濃度の実測調査及び湿度管理に関する分析
金 勲林 基哉開原 典子大澤 元毅阪東 美智子
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 18 巻 2 号 p. 77-87

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抄録

日本は超高齢社会として世界で最も高齢化が進んでおり,これに伴う高齢者施設の需要が急増している。高齢者は免疫力や感受性,環境調整力が低下するため,適切な室内環境や衛生環境を提供できる体制整備が必要であるが,環境衛生の維持管理・指導の法的根拠がなく,その管理は建築物管理に専門知識・経験を有さない施設管理者・運営者に委ねられている可能性がある。
本研究では,高齢者施設の実態と課題を把握し,環境改善及び対策に資することを目的とし,首都圏の高齢者施設を対象に現場設問及び冬期実測調査を行った。
温度・湿度・二酸化炭素濃度の実態と湿度環境の改善に関する検討を行った結果,温度及びCO2濃度に関しては概ね良好に管理されていたが,湿度については施設側の努力にもかかわらず,全施設において冬期最低基準とされる相対湿度40%を満たせない環境にあることが明らかとなった。また,施設によって換気量にはかなりの差があることがうかがわれた。
今回調査対象とした施設のなかで建築基準法改正後の施設では換気・空調による外気導入量が多いことに起因することにより,絶対湿度が低かった。測定結果から得られた絶対湿度差及びCO2濃度差の相関と人体からの水分及びCO2発生量による理論的な相関を比べることで,換気量及び加湿の実態を推察できる可能性が示された。

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© 2015 一般社団法人 室内環境学会
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