抄録
住居内において主に防虫剤として使用されるナフタレン(naphthalene,以下NPと記す)はヒトへの発がんの可能性が指摘されており,住人への長期曝露による健康影響が懸念される。一般に空気中NPは吸引ポンプを使用したアクティブサンプリング法により分析される。本研究において,室内空気中NPを,吸引ポンプを使用せず,利便性の高いパッシブサンプリング法により捕集し,同じ防虫剤として広く使用されるp-ジクロロベンゼン(p-dichlorobenzene,以下DCBと記す)と同時に定量する方法を開発した。
活性炭200 mgを充填した市販のパッシブサンプラーを用い,空気中NPおよびDCBを24時間採取した。捕集後サンプラーから活性炭を取り出し,これらの化学物質をトルエン1 mlおよび内部標準として各物質のサロゲートを添加して抽出した後,ガスクロマトグラフィー/質量分析により定量した。
NPおよびDCBの標準溶液より作成した検量線は,それぞれ約400および600 μg/m3以下の空気中濃度において良好な直線性を示し,定量下限値はそれぞれ0.09および0.04 μg/m3であった。再現性試験におけるこれら化学物質の定量値の変動係数は,ともに7%以下であり良好であった。捕集したサンプラー中のNPおよびDCBは,いずれも4℃遮光保存で2ヶ月間は安定であった。
本法は,室内空気中NPの簡易で再現性の良い分析法であるとともに,DCBを同時に定量することが可能な方法であると考えられた。