室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
21 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著論文
  • 馬場 康介, 中村 亜衣, 松村 年郎, 森田 孝節, 松延 邦明, 吉野 友美
    2018 年 21 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル オープンアクセス
    室内空気中の二酸化窒素(NO2)は暖房器具, ガスレンジ及び喫煙等によって発生するもので, 呼吸器疾患の原因物質として指摘されている。このNO2は大気環境基準や学校環境衛生基準等が制定されており, 種々の行政対策が施行されている。
    空気中のNO2の測定法としてはザルツマン試薬を用いる吸光光度法や化学発光法が標準測定法として採用されている。これらの中で, ザルツマン法はNO2の捕集に吸収液を用いる湿式法で取扱が不便である。 一方, 化学発光法は装置が大型で高価である。
    本研究ではこれらの点を考慮し, 以下の様な測定法の開発を行った。本法は1-ヒドラジノフタラジン(1-HP)試薬, 捕集剤にトリエタノールアミン (TEA) と水酸化ナトリウムの混合捕集剤を用い, 測定にはHPLCを用いる乾式法である。 本報では捕集剤をガラス管に充填したサンプラーを作製し, 捕集率, 抽出法, 再現性, 理論値と分析値の比較等の基礎的検討を行い, 次の様な点が明らかとなった。捕集率は捕集管1本で99%以上, 繰り返し精度は相対標準偏差で4.1%, 定量下限値は0.01 ppm(100 mL/min x 30 min)以下, ザルツマン法との間に有意な相関が認められ, 本法の実用性が明らかとなった。
  • 京谷 隆, 川﨑 たまみ, 吉江 幸子, 丑込 道雄, 壷井 修
    2018 年 21 巻 3 号 p. 189-197
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル オープンアクセス
    においに関して鉄道利用者からの意見が多い,公共トイレの一つである駅トイレでは,鉄道事業者が様々な評価や対策を行っている。筆者らは,手軽に使える検知管法によって,代表的な臭気成分の一つであるアンモニアを指標に,臭気発生源の探索を行ってきた。しかし,検知管の検出可能な濃度がアンモニアの検知閾値(0.1ppm)に対して高いため,不快臭を感じるトイレでも測定結果が不検出となることが多かった。このため,臭気発生源の発見に繋がらない場合もあった。そこで,現場での臭気源の探索のためには,より濃度の低いアンモニアの検出法が必要とされてきた。
    このような状況に対応するため,筆者らは,既に開発した,より検出感度が高いアンモニアガスセンサ素子を用いた可搬型のシステムを試作し,それを用いて,臭気の強さが異なる3つの駅トイレにおいて実証試験を行った。その結果,より低濃度のアンモニアを検出することができること,約5分で臭気源の位置を推定することができることを確認した。
技術資料
  • 吉田 俊明, 味村 真弓
    2018 年 21 巻 3 号 p. 199-207
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル フリー
    住居内において主に防虫剤として使用されるナフタレン(naphthalene,以下NPと記す)はヒトへの発がんの可能性が指摘されており,住人への長期曝露による健康影響が懸念される。一般に空気中NPは吸引ポンプを使用したアクティブサンプリング法により分析される。本研究において,室内空気中NPを,吸引ポンプを使用せず,利便性の高いパッシブサンプリング法により捕集し,同じ防虫剤として広く使用されるp-ジクロロベンゼン(p-dichlorobenzene,以下DCBと記す)と同時に定量する方法を開発した。
    活性炭200 mgを充填した市販のパッシブサンプラーを用い,空気中NPおよびDCBを24時間採取した。捕集後サンプラーから活性炭を取り出し,これらの化学物質をトルエン1 mlおよび内部標準として各物質のサロゲートを添加して抽出した後,ガスクロマトグラフィー/質量分析により定量した。
    NPおよびDCBの標準溶液より作成した検量線は,それぞれ約400および600 μg/m3以下の空気中濃度において良好な直線性を示し,定量下限値はそれぞれ0.09および0.04 μg/m3であった。再現性試験におけるこれら化学物質の定量値の変動係数は,ともに7%以下であり良好であった。捕集したサンプラー中のNPおよびDCBは,いずれも4℃遮光保存で2ヶ月間は安定であった。
    本法は,室内空気中NPの簡易で再現性の良い分析法であるとともに,DCBを同時に定量することが可能な方法であると考えられた。
解説
  • 序論:室内環境微生物の諸問題に関わる住宅形態の変化と疾病
    川上 裕司
    2018 年 21 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル フリー
    本号より,「室内環境の微生物に関わる最近の話題」のタイトルで微生物分科会メンバー6名によるリレー解説を開始した。室内環境における微生物の問題は年を追うごとに深刻な社会問題となっている。「カビによる室内環境の汚染が引き起こすアレルギーの問題」,「職場や公共施設での感染症やアレルギーの問題」,「近年,頻発している地震,台風,火山噴火などの自然災害に伴う仮設住宅でのアレルギーや感染症の問題」など多岐に渡っている。このリレー解説では,住宅と職場環境にスポットを当て,微生物の汚染実態,感染経路,それに伴う健康影響と対策法について解説する。
    序論として,住宅形態の変化と疾病について述べる。室内環境における微生物の感染経路から見ると,1)飛沫感染(droplet infection),2)空気感染(air-borne infection),3)媒介物(食物・接触)感染(vehicle-borne infection)の3つが特に重視されている。このうち空気感染は,気密性の高い住宅や公共施設など現代の室内環境で問題視すべき感染経路であり,アレルギー疾患の増加と対策においても考慮すべき事象である。実際に,幼稚園児から高校生まで鼻・副鼻腔疾患はどの年代でも罹患率が高く,特に小学生と中学生の罹患率が際立っている。また,近年65歳以上の高齢者の喘息罹患者が増加傾向にある。これらの要因として浮遊真菌の継続的な吸入が懸念されている。
feedback
Top