微小粒子状物質(PM2.5)に含まれる酸化還元活性物質(PAHキノン類など)は, 細胞内で酸化還元サイクルを介して活性酸素(Reactive Oxygen Species, ROS)の産生を助長し, 生体に対して酸化ストレスを引き起こすと考えられている。本研究では, 光触媒反応によるPM2.5のROS産生能の低減効果を検証することを目的に, アナターゼ形TiO2を担持した石英繊維フィルターを作成してPM2.5試料をろ過捕集し, 紫外線を照射した前後のROS産生能をフローインジェクション分析-ジチオトレイトールアッセイにより評価した。その結果, 採取したPM2.5試料のROS産生能は紫外線照射前が0.18~0.31 nmol min-1 m-3(中央値0.21 nmol min-1 m-3, n=9)であったのに対し, 紫外線照射3日後は0.088~0.19 nmol min-1 m-3(中央値0.15 nmol min-1 m-3, n=9)となり, 有意に減少した(p=0.008)。ただし, ROS産生能の減少は単調ではなく, 一時的に増加して減少する傾向を示した。これは光触媒反応によるPAHキノン類の分解と同時に, 前駆物質の多環芳香族炭化水素からPAHキノン類が生成したためと考えられ, ROS産生能の低減を図るには, 共存する多環芳香族炭化水素の影響も考慮する必要があることが示唆された。