室内環境
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総説
コロナウィルスの感染対策に有用な室内環境に関連する研究事例の紹介
篠原 直秀
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2020 年 23 巻 2 号 p. 99-106

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抄録

2020年の春時点で, 日本を含む世界中で新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の感染が猛威を振るっており, 三密を避けることなど, より一層の感染対策が求められている。 本稿では, 室内環境における感染対策に関わる情報を収集・整理した。 感染者が呼吸・会話・咳・くしゃみなどをすると, ウィルスを含む飛沫が環境中に飛散する。 会話や咳で飛散する大きな粒子は, 多くの場合2 m以内に床面に沈着するが, 室内の気流によっては5 m程度飛散することもある。 また, 飛沫核などの小さな粒子は, 沈着せずに数時間もしくはそれ以上室内を漂う可能性がある。 室内空気中からウィルスが除去される経路としては, 床面や壁面への沈着, 換気による屋外への排出, ウィルスの不活化があるが, 無風の状態では10 μmを超えるサイズの粒子ではほぼ沈着で除去されるが, 数μm以下の粒子では換気と不活化の寄与が大きい。 室内を漂うエアロゾル上の新型コロナウィルスの不活化の半減期は1.1時間程度であり, 換気回数1回/hの場合よりも減衰への寄与は小さい。 日本の一般家屋の日常生活時の換気回数は, 春夏で1.2-1.7回/h, 秋冬で0.6回/h程度であり, 病室などで感染対策として取られる換気回数よりはるかに低い。 窓開け換気は室内濃度を低減させるのに非常に有効であるが, 屋外の風向や風速によっては十分な換気量が得られないケースもある。 空気清浄機については, コロナウィルスについての研究はないが, HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を用いた場合には, ウィルスについても一定の効果が認められている。

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© 2020 一般社団法人 室内環境学会
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