抄録
世界保健機関(WHO)欧州事務局によりベンゼン及びナフタレンの室内空気質ガイドラインが設定されている。しかし, 当該物質は日本における室内濃度指針値の対象ではない。今回の調査は, 室内空気中ベンゼン及びナフタレンの実態を把握するため, 日本国内28軒の住宅における室内外の空気を年4回測定し, その季節変化を評価した。その結果, ベンゼンは12月から3月にかけて高い濃度を示し, WHOによるガイドライン値を超過する住宅が多数観測された。ナフタレンについては全体的に低濃度であったものの, 1軒の住宅でWHOによる基準値を超過した。ベンゼン及びナフタレンの室内濃度は多くの住宅で室外より高く, 汚染源の多くは室内に起因することが明らかとなった。本研究による成果は, 将来的に日本におけるベンゼンおよびナフタレンの室内濃度指針値の設定を検討する際に有用と考えられる。