室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
25 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著論文
  • 高木 麻衣, 瀬山 春彦, 田中 敦, 吉永 淳
    2022 年 25 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    低レベルの鉛曝露による小児の認知機能及び成人の腎機能への影響について, 世界各国で行われた疫学調査の結果から, 閾値が不明瞭であることが指摘されている。日本人の鉛ばく露レベルは低いが, 可能な限り人々の鉛曝露を低減化する必要があると考えられている。日本人の主要な鉛曝露源であるハウスダスト中鉛の起源を探ることを研究目的とし, 2006~2007年に国内の一般家庭10戸の住宅から採取し, 粒径250 μm以下の分画の鉛濃度が126~1400 mg kg-1と高い濃度であった掃除機塵中の鉛含有物の探索を, 顕微蛍光X線分析法(XRF)等を用いて行った。粒径250 μm以上の掃除機塵から, 様々な色や形の粒子を選び出し, 顕微XRFにより, 鉛含有物の特定を行った。分析した掃除機塵試料から, 推定濃度として数%~数十%の鉛を含有する物体が7つ発見された。色調・形態の観察やXRFスペクトル解析, 粉末X線回折分析(XRD)を行った結果, これらはMo, Cr, Ti, Baなどが共存する塗料片や鉛系の安定剤を使用したポリ塩化ビニルの破片と考えられた。これらが細断され, 細かい破片となってハウスダストに混入して鉛濃度が高くなる可能性があることが示唆された。こうした塗料やポリ塩化ビニルを使用する製品を特定し, 使用を中止することで, 室内塵の鉛汚染レベルの低減化を図ることができると考えられた。
調査資料
  • ―市営複合施設における長期実測調査―
    藤澤 星, 三田村 輝章
    2022 年 25 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー
    本研究は, 光触媒工業会の性能認証を受けている可視光応答型光触媒の室内環境改善効果を検証するため, 市営複合施設9階ロビーの内装材表面に可視光応答型光触媒をスプレーガンでコーティングして, 室内照度の他, ATP拭き取り検査や化学汚染物質濃度などを数ヶ月毎に約2年間にわたって実測した。その結果, ロビー内の照度は南面ガラス窓から入射する太陽光によって, 光触媒工業会が光触媒効果の発揮目安として設定している最低限の照度200 lx以上を, 通年で満たしていることを確認した。ATP拭き取り検査では, 光触媒施工済サンプル群の方が光触媒未施工サンプル群よりも1%有意水準でATP量平均値が64%低くなっていることを確認し, 実環境において長期継続的に光触媒効果が起こっていることが示唆された。化学汚染物質濃度の実測結果より, アセトアルデヒドでは光触媒施工済サンプル群の方が光触媒未施工サンプル群よりも1%有意水準で濃度平均値が40%低くなっていることを確認した。実環境での光触媒効果による室内環境改善効果は, 短期的には外気導入などの外乱要因によって効果を把握しにくいが, 長期的な実測データを蓄積し, 統計的な分析を行うことによって, 定量化できることが示唆された。
  • 大嶋 直浩, 田原 麻衣子, 酒井 信夫, 五十嵐 良明
    2022 年 25 巻 2 号 p. 177-184
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー
    世界保健機関(WHO)欧州事務局によりベンゼン及びナフタレンの室内空気質ガイドラインが設定されている。しかし, 当該物質は日本における室内濃度指針値の対象ではない。今回の調査は, 室内空気中ベンゼン及びナフタレンの実態を把握するため, 日本国内28軒の住宅における室内外の空気を年4回測定し, その季節変化を評価した。その結果, ベンゼンは12月から3月にかけて高い濃度を示し, WHOによるガイドライン値を超過する住宅が多数観測された。ナフタレンについては全体的に低濃度であったものの, 1軒の住宅でWHOによる基準値を超過した。ベンゼン及びナフタレンの室内濃度は多くの住宅で室外より高く, 汚染源の多くは室内に起因することが明らかとなった。本研究による成果は, 将来的に日本におけるベンゼンおよびナフタレンの室内濃度指針値の設定を検討する際に有用と考えられる。
feedback
Top