室内環境
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原著論文
在宅中の子どもにおける2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートおよび2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートの摂取量の推定
吉田 俊明 味村 真弓左近 直美
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2024 年 27 巻 1 号 p. 9-22

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抄録
 2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート (TMPD-MB:代表的商品名 テキサノール) および2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート (TMPD-DB:同 TXIB) は,それぞれ,主に水性塗料や水性接着剤の造膜助剤および可塑剤として使用され,厚生労働省により室内空気中濃度の指針値の策定が検討されている化学物質である。国内外においてこれら化学物質とシックハウス症候群やアレルギー性疾患との関連性が報告されている。住民における健康被害を防止するためには,一般生活環境下での摂取量に関する知見は非常に重要であるが,その実態はほとんど把握されていない。
 本研究では,成人よりも化学物質に対して脆弱である子ども (132名,6~15歳) を対象として,これらの尿中代謝物量から,一日中在宅したと想定した際のTMPD-MBまたはTMPD-DBとしての摂取量を算出した。代謝物は対象者のすべての尿から検出され,これらの化学物質による体内汚染が我国の子どもに広範囲に及んでいることが示唆された。これらの体重あたり一日摂取量は概ね1 μg/kg,最高では10 μg/kg程度であり,在宅中のp-ジクロロベンゼン,ナフタレンおよび数種のフタル酸エステル類の一日摂取量と同レベルであると推定された。
 本研究の成果は,住民におけるこれら化学物質の健康被害を防止するための更なる曝露影響評価研究や行政的施策において,有用な資料として活用できるものと考えられる。
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© 2024 一般社団法人 室内環境学会
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