抄録
帯電微粒子水にはヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種が含まれており,ウイルスの構成タンパク質および遺伝子を破壊し,ウイルスを不活化することが知られている。本研究では,帯電微粒子水がアレルゲンにも不活化効果があるかどうかを検証した。最初に日本におけるアレルギーの主要な原因となるスギ花粉アレルゲン(Cry j 1)とコナヒョウヒダニアレルゲン(Der f 1)に対する帯電微粒子水の効果をドットブロット法で調べた。その結果,2時間の帯電微粒子水への曝露により,PVDF膜上のCry j 1とDer f 1は不活化した。次に,スギ花粉および生きたダニを帯電微粒子水に曝露し,生死に影響があるかどうかを調べた。スギ花粉は曝露時間の経過とともに脱皮能力を失い,72時間の処理後にはすべての花粉が脱皮能力を失った。また,ダニは帯電微粒子水に曝露されることで時間の経過とともに死んでいき,12時間後にはほぼすべて死亡した。さらに,帯電微粒子水曝露後に花粉およびダニから抽出されたアレルゲン量は,無処理群と比較して大幅に減少した。本研究の結果から,帯電微粒子水はアレルゲンを不活化するだけでなく,花粉やダニ自体にも影響を及ぼし,アレルギーを不活化できる可能性が示唆された。