カイコの繭では,可視光下で白繭に見えても,紫外線下で黄白色,黄緑色,紫色等の蛍光を発することがある.白繭品種の繭層に含まれる黄色蛍光物質は,3次元蛍光分析により蛍光フラボノイドであると推定されており,日本在来種よりも中国在来種の方が,平均的に黄色蛍光強度が高いことが明らかとなっている.カイコにおいて遺伝子組換えが成功して以来,蛍光タンパク質をフィブロインに融合させた蛍光シルクが開発されたが,蛍光シルク系統の品種改良を行うためには,蛍光タンパク質が発する蛍光の観察を妨げるため,セリシン層に黄色蛍光物質を含む系統は望ましくない.そこで,農研機構で系統維持されている白繭の実用系統で繭層の黄色蛍光の有無を調査したところ,支146号,中510号,中511号で個体間差異が見られたので,黄色蛍光が弱い個体を10世代以上選抜し,黄色蛍光を持たない中国種であるMCS3,MCS181,MCS107を育成した.