2023 年 31 巻 p. 35-40
シルクは服飾用素材に加え,医療用素材や工業用素材としても注目されており,強度に優れたシルクの開発が待ち望まれている.選抜育種により高強度系統カイコのMC502が作出されたが,生糸収率の向上が実用化に向けた課題であった.これまでの検討で日137号と交雑したMC502×日137号はMC502の高強度特性を保持しつつ,生糸収率の向上が可能であることがわかったが,逆交雑による繭糸質への影響は不明であった.そこで,MC502と日137号の正逆交雑間で飼育経過や繰糸成績,生糸の力学物性に違いがあるのかを検討した.正逆交雑間で飼育経過や繰糸成績に差は見られず,生糸収率も同程度であった.飼育年により正逆交雑間で繭層重や繭糸強度に差が認められる場合もあったが,その差は僅かであり,正逆交雑ともMC502と同程度の高い繭糸強度が保持されていた.したがって,正逆交雑間の繭糸質に大きな差はみられないことがわかった.