抄録
本稿は、国際法とは、いかなる視点から説明すれば多くの人たちに正確な認識を持ってもらえるのか、という問題意識から、クライシスマネジメントとリスクマネジメントの視点を導入して国際法のあり方を説明しようと試みたものである。国際法は、クライシスマネジメントに重心を置いた法分野と見ることができるが、実はリスクマネジメントの法的枠組の拡充が求められている。すなわち、リスクマネジメントの法的枠組としての「紛争の平和的解決」(交渉、国際裁判等の手段による解決)が充実し紛争がそこで収まれば、クライシスマネジメントの法的枠組である「紛争の強力的解決」(安全保障の枠組、すなわち、経済制裁、武力制裁等の「力」による解決)の出番はない。紛争当事国が紛争の平和的解決の各手段をどのように使えば、紛争当事国間で納得のいく解決に導くことができるのかという部分の法政策学的構築が必要である。通例、国際法の教科書では、紛争の平和的解決の各手段を提示するのみで、その各手段の使い方、運用の仕方についての説明は皆無である。国際法学の浸透・進化のためには、クライシスマネジメントならびにリスクマネジメントという視点を取り込んだ法構築を行うことが不可欠であり、とりわけ、紛争の平和的解決の分野を筆頭に、リスクマネジメントの法的枠組と見ることができる国際法の諸分野の拡充が急務である。