抄録
目 的
助産学・周産期ケア分野で用いられる言語(英語を母語としない者にとっては「英語」)は今まで量的に分析されておらず,これに関する情報もない。この分野で特に母語が英語でない者にとっての言語学習負担を明らかにするため,本研究では助産学・周産期ケア分野の英語論文のコーパス(総語彙集)を作成し,語彙や文章構造の特徴を分析した。
方 法
2005年1月から12月に発行された助産学・周産期ケア分野の英語雑誌の中から主要5誌を選び,これらの中の論文で用いられた英語をもとにコーパスを作成した。そして,一般英語(General English)および保健分野(Public Health)の論文で用いられた英語との比較によりキーワードを抽出した。また頻出熟語を抽出し,読みやすさ尺度を計算した。
結 果
助産学・周産期ケア分野で特に重要な英語として,頻出語彙242語を含む3,590語のキーワードと頻出熟語を抽出した。抽出結果より,当該分野の英語論文には母親・子供・ケア提供者間の関わり合い,出産のプロセス,包括的ケアの重要性に関する語句がよく用いられていた。身体の名称や疾病に関する用語の使用はあまり認められなかった。読みやすさ尺度に関するFlesch Reading Ease指数(30.7)より,この分野の英語論文を読むには,平均的に,英語圏の大学卒業者程度の英語能力が必要であることが示唆された。
結 論
量的分析によって,助産学・周産期ケア分野の英語論文の中で核となる重要頻出語句を抽出することができた。当該分野の英語は,一般英語とは異なる点があり,保健分野の英語とはより密接に関係し合っていた。量的分析の結果をもとに語句の焦点を絞って学習することで,助産学・周産期ケア分野の英語は比較的習得しやすくなることが示され,一般英語の理解とはまた独立した形で,当該分野の英語をよりスムーズに理解することが可能であると示唆された。今後,本研究で得られた仮説を検証していく必要がある。