2000 年 41 巻 2 号 p. 9-20
本研究は科学概念の形成をはかるのに統合的調和の方法を取り入れて,授業を実施し,その方法と効果を実証的に検証することを目的とする。統合的調和はオースベルが提唱し,これをノバックが理科教育上取り入れたものの一つである。また,その指導方法をノバックは示している。これをもとに,中学生の電流,電圧の識別,関係性の理解に向けて,具体的な方法を提案した。これを統合的調和の方法と呼ぶことにする。その方法を評価するために, 3つの実験(電流・電圧学習の直後,オームの法則の学習後,全ての学習終了後において,電流と電圧の統合した問題の解答のようすを分析する)と1つの調査(統合的調和による学習の前後で,生徒の答えを自ら比較,自己評価したものを分析する)を行った。その結果,学力上位,下位両方のレベルの生徒に対して,統合的調和の方法は有効であることが分かった。特に上位群では学習方略上の効果が示唆され,下位群では統合の問題についての理解の改善が確認された。