2009 年 49 巻 3 号 p. 55-66
本研究は,全体的処理による自然認識の科学的に適正なプロトタイプ構築の成否を論点とした授業分析の方法を提案することを目的とした。小学校第4学年の「金属のあたたまりかた」を対象として,プロトタイプの種類と強度を検出する調査方法・調査結果を例示した。分析の結果,授業前には,金属のあたたまりかたの科学的に適正なプロトタイプを構築している児童はなかった。授業後には,52.8%の児童に.金属板をあたためる実験で観察を行った金属板の箇所についての科学的に適正なプロトタイプが構築された。また,上記の児童のうちの31.6%(児童全体では16.7%)の児童に,学習転移により,授業で観察を行わなかった金属板の箇所についても科学的に適正なプロトタイプが構築された。コネクショニストモデルの考え方に立脚し,本研究で示したような調査方法を用いることによって,これまで研究対象になり難かった全体的処理による自然認識の科学的に適正なプロトタイプ構築の成否を論点とした授業分析を行うことが可能になると考えられる。