抄録
本研究は, 中学校理科の教科書における日常生活や社会との関連の効果的な配置の特徴について, 中学校3年の物理的領域を事例として, 明らかにすることを目的とした。その結果, 日常生活や社会との関連の効果的な配置の特徴として, 小単元の中で日常生活や社会との関連が科学的概念の取り扱いの直前に配置されているミクロな視点での取り扱いと, 単元の中で日常生活や社会に関連する課題が単元の導入段階で配置された後, 関連する科学的概念が取り扱われ, 単元の途中段階, あるいは最終段階においてその課題を解決できるようになっているマクロな視点での取り扱いがあることが明らかとなった。両者とも学習の出発点において日常生活や社会との関連を取り扱うことで, 生徒が科学的概念を学習する前提となる必要性をつくりだしていると結論づけられる。