2020 年 61 巻 1 号 p. 67-81
「理科授業をデザインする資質・能力」の育成に関する理論化を図ることは,喫緊の課題である。そこで,本研究では,子どもが科学概念を構築する為の理科授業デザインの視点を整理し,その上で実践に向けて見出した授業デザインの視点を基に,理科教授・学習プロセスマップを開発した。この理科教授・学習プロセスマップの有用性を検討するために,理科授業デザイン時の学習指導案の記載内容と理科教授・学習プロセスマップを用いた省察(再構成)場面で追加された(必要とされた)記載内容の差異点を,設定した質的評価の基準に照らして分析した。その結果,学生は具体的な活動場面は学習指導案に記載できるが,子どもの考えを基にした理科授業デザインを構想することには不慣れであること,「もともとの考え」が想定できるか否かで,理科授業デザインの構想に差異が生じること,学生はプロセスマップを用いて自身の授業デザインを省察(再構成)するなかで,子どもの考えの変容を想定する必要性に気づき,そのための具体的な手立てを追加する必要があると考えていたが示された。さらに,授業の導入やまとめの場面で「子どもの考え」を適切に評価することの重要性や,それらの具体的な手法についても,大学教員や教育実習指導教諭が教員志望学生に指導すべきことであることも理解できた。