理科教育学研究
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資料論文
固体酸触媒を利用したエステルのマイクロスケール合成
―エステルのかおりを比較する化学実験授業プログラムの開発―
陣内 大地松岡 雅忠
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2024 年 64 巻 3 号 p. 353-364

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抄録

化学教育の分野では,試薬類の使用量の少量化を意識した「マイクロスケール実験」が教材開発の重要な柱の一つとなっている。マイクロスケール実験は,人と環境にやさしく,持続可能な社会の発展を化学の面から追求するグリーン・サスティナブルケミストリー(GSC)の考え方に立脚している。そこで筆者らは,かおりをテーマにした実験授業プログラム開発のため,芳香を有する有機化合物の代表例であるエステルを,固体酸触媒を用いて合成する際の反応条件を検討した。実験授業ではまず,固体酸触媒を用いてエステルを安全に合成させた。続いて,日常生活で使用される種々の香料のかおりを文章で表現させ,比較しあうとともに,香料の多くが環境負荷の少ない化学合成により供給されていることに触れた。模擬授業の結果からは,実験への満足度が高いことや,同じかおりでも表現が異なることへの理解,香気成分への意識の高まりなど,有機化合物や自然環境への興味関心の向上につながることが示唆された。

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