科学の正体はテクストであり,児童にとって最も身近な科学のテクストは理科教科書であるから,理科教科書の読解は,児童にとって科学の学びである(遠西,2021)。本研究は,小学校第5学年「種子の中の養分」の指導を理科教科書の読解によって試みた実践研究である。本実践では,テクスト解釈の指導法として三読法(石山,1973)が導入され,児童はテクストから理論と実験方法を読み取り,結果を予想して実験仮説を設定できた。実験仮説は実験を有意味に実行することを可能にした。また予想が可能になるので,実際の結果との比較から実験が成功していることを確信でき,理論にコミットできた。理論はテクストを構成する命題だから,この命題へのコミットメントの形成はテクストの理解を助ける。実験はテクストの一部であり,テクスト解釈の手段として機能している。児童は,理科教科書の読解によって,「(マメ科の)植物は子葉にあるデンプンを使って発芽する」ことを確かに理解できた。