高等学校の数学にて生徒はベクトルという概念を学ぶ。この概念により,生徒は,諸量を定義に基づきベクトル量とスカラー量とに分類できるようになる。しかしながら,小学校以来,身近で馴染み深く何度も学んできた電流という量の定義は大学の電磁気学の各種教科書にて一貫しておらず,分類は一義的では無い。本稿は,数学的な背景と現象としての電流を紹介し,学校現場に於ける電流の取り扱われ方,積分形や微分形という観点,微視的及び巨視的な取り扱い並びに粗視化した観点からの整理を試みた。電流をベクトル量やスカラー量とする根拠を文献から探した。現状では,電流には狭義な意味とともに諸学校にて他の異なる物理量を取り込んだ広義な意味もあることが分かった。電流を教育する際の表現や教材への配慮,及び様々な電流の理解の仕方を論じ,提案した。