2025 年 66 巻 2 号 p. 267-279
本研究では,大学生7名を対象として,科学技術に関連する社会的諸問題(SSI)である人工肉の賛否をテーマとして,二者択一の意思決定をする際の思考のプロセスについて検討した。その結果,次の5点が明らかとなった。(1)意思決定において,賛成,または反対のいずれかであっても,多くの場合,各学生個人が判断した賛否の割合は,100%の賛成,または反対ではなかった。(2)授業の最初と最終の段階での賛否の割合の変容は,多くの場合,10%~20%程度で大きく変化しなかった。(3)最初と最後の賛否の割合に変容が見られない学生でも,学習の途中段階において,多くの場合,賛否の割合の変容が見られたことから,意思決定の際に,心の中に相反する何らかの考えがあったと考えられる。(4)賛否の割合の変容に最も影響を与えているのは,自分が収集した資料の内容をグループ内で発表したり,他者の発表を聞いたりする活動であった。(5)意思決定において,合理的インフォーマル推論,感情的インフォーマル推論,直感的インフォーマル推論が用いられていた。