日本女性科学者の会学術誌
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総説
新奇膜脂質、ホスファチジルグルコシド(PtdGlc):微量な糖脂質への拘り
長塚 靖子平林 義雄
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2009 年 10 巻 1 号 p. 41-46

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抄録
私達は新しいグルコース含有グリセロリン脂質ホスファチジルグルコシド(PtdGlc)をほ乳類で初めて見いだした。PtdGlcは胎生期のマウス、ラットの脳に強く発現しており、その発現様式は細胞種及び発生のステージに特異的である。PtdGlcはグリセロールのsn-1位にC18:0;sn-2位にC20:0の飽和脂肪酸のみを含む単一分子種からなり、この分子種組成から予想されるように、脂質マイクロドメイン(ラフト)を構成する。PtdGlcを含むラフトをPtdGlc特異抗体DIM21で刺激すると神経上皮細胞はEGFレセプターの活性化からJak-Stat経路の活性化を経てGFAP陽性のアストログリアへと分化する。さらに、PtdGlcはリン脂質であるためホスホリパーゼA2により消化されてリゾ-PtdGlc (LPG)を生じ、LPGはニューロン成長円錐に働いて縮退や反発応答を引き起こす。すなわち、PtdGlcはラジアル/アストログリアで産生されてLPGを介してニューロンに働く新しい生理活性脂質である。
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© 2009 日本女性科学者の会
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