眼は、脳や生殖器官と同様に、臓器機能を温存するために炎症が自動制御される性質すわなち免疫特権(immune privilege)が備わっている特殊な臓器である。角膜移植モデルを用いて、眼の免疫特権の分子機構を解析し、臨床における治療に応用することが可能である。角膜組織の同所性または異所性移植モデルを用いて、角膜を構成する各細胞層が各々異なる免疫特性を有することを示した。免疫原性は角膜上皮細胞と実質細胞に由来するが、免疫特権は角膜内皮細胞に由来する。角膜内皮細胞に恒常発現するCD95LとB7-H1が角膜内に浸潤する炎症細胞にアポトーシスを誘導して眼局所における免疫抑制を担っている。臨床への応用として、ドナー角膜上皮を宿主由来上皮に置換して移植することにより、拒絶のハイリスク宿主においても抗原感作と拒絶を回避でき、移植片の長期生着を得ることが可能である。