Skin Cancer
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特別講演
悪性黒色腫におけるHVJ-E腫瘍内投与による抗腫瘍効果の検討について
種村 篤清原 英司片山 一朗金田 安史河上 裕
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ジャーナル 認証あり

2009 年 24 巻 2 号 p. 181-191

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抄録
HVJ(Hemagglutinating virus of Japan,別名センダイウイルス)はパラミクソウイルス科パラミクソウイルス属のウイルスで,強い膜融合能をもつ特徴があるため,これまでその不活性化粒子であるHVJ-Envelope(以下,HVJ-E)は,ドラッグデリバリーベクターとして研究されてきた。しかし近年,我々はHVJ-E自身が強い抗腫瘍活性を有することを見出した。まず,大腸癌細胞株を皮内に移植したマウスにHVJ-Eを腫瘍内投与したところ,顕著にその増殖が抑制された。また,B16マウスメラノーマを同系マウスに移植した実験に於いても同様に,有意な腫瘍増殖抑制効果と生存期間の延長が確認された。これらの抗腫瘍効果の機序として,HVJ-Eによる腫瘍巣への免疫細胞誘導作用,樹状細胞の成熟化促進作用,腫瘍に対するNK細胞と細胞傷害性T細胞の活性誘導作用,および樹状細胞からのIL-6分泌を介した制御性T細胞の機能抑制作用が証明されている。これらの基礎的データに基づき,進行性悪性黒色腫症例に対するHVJ-E投与の臨床研究プロトコールを作成の上,学内の倫理委員会に申請し,2009年7月28日承認された。本稿では,これまで得られた基礎データの一端を紹介し,臨床研究実施計画の要点を概説する。
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© 2009 日本皮膚悪性腫瘍学会
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