Skin Cancer
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ワークショップ1 手術適応が問題となる皮膚悪性腫瘍
血管肉腫の手術適応とその可能性
田口 理史水上 晶子土田 哲也
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2010 年 25 巻 3 号 p. 282-287

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抄録

血管肉腫(AS)は5年生存率が10%前後と極めて予後不良な疾患であるにもかかわらず,ASの標準的治療指針は未だ確立されていない。日本皮膚外科学会「ASグループスタディー」のアンケート調査の集計結果において,切除margin 1cm未満の群と1~2cm離した群で,有意に後者の生存期間の延長を認めており,また切除断端陰性群は陽性群と比べて有意な生存期間の延長が認められた。すなわち病理組織学的に病変を取りきることが予後の改善につながることが,このデータより示唆される。しかしながらASの病変は広範囲に存在することが多く,その発生が多中心性の性質を有する事を鑑みると完全切除の可能な症例は限られる。化学療法に関して同スタディーでは,化学療法を行った群に有意な生存期間の延長を認めている。抗腫瘍薬による感受性が高いASにおいて,初期治療としての化学療法は転移抑制という点で期待できる。予後改善のために病変を取りきることの重要性を考慮するとASに対する手術療法を効果的に行うための病期別治療指針の作成が急務であり,さらに術前・術後の補助療法の確立も必要である。

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© 2010 日本皮膚悪性腫瘍学会
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