2011 年 26 巻 3 号 p. 289-293
重度の神経性食思不振症や末期癌を基盤とした低栄養状態の患者で,下肢の急激な浮腫とともに出現する特異な皮膚症状“striaelike epidermal distension”を解説した。
臨床像はいずれも下腿,足背の浮腫の強い部分に生じる一部隆起性の紅色ないしは紅褐色の線状皮疹で,水疱や潰瘍形成を伴うこともある。一見,臨床像はstriae distensaeや皮脂欠乏性湿疹の重症型を思わせるが,病理組織像は両者とは異なり,表皮の変性,壊死,真皮血管壁の腫脹や変性である。これらの線状皮疹はいずれも,浮腫の改善とともに速やかに軽快し,後遺症も残さないことから,浮腫に対する治療が肝腎である。この皮膚症状については教科書的には記載がなく,その概念についてはほとんど知られていないが,認識すべき皮膚症状の1つと考える。