長崎市立市民病院において,2004年から2011年のボーエン病患者は年間平均15例,総数119例で,ボーエン病患者総数対皮膚科新患患者総数は0.94%と高く,全皮膚悪性腫瘍に占める割合も25%と高かった。原因として1945年に投下された原爆の影響を考えた。被爆者と非被爆者のボーエン病を比較すると被爆者は多発する傾向があり(15%),他の皮膚癌合併が高頻度であった(12%)。しかしボーエン病患者中被爆者の割合(31.1%)は,長崎市の総人口に占める被爆者の割合(35.6%)とほぼ一致しており,被爆者に多く発生してはいなかった。つまりボーエン病は非被爆者も含めた長崎市住民全体に多いことになり,外部被曝以外に内部被曝による発がんリスクも考えられた。また約10年前の当院ボーエン病の頻度は年間平均5例と低く,被爆した皮膚は遺伝子異常により発がんリスクを有しており,高齢化に伴いボーエン病発症が増加してきたと推論した。