2013 年 28 巻 2 号 p. 181-184
73歳,女性。以前より左下腿外側に淡褐色の結節を自覚していたが,徐々に隆起してきた。地元の皮膚科医院で生検を受け,有棘細胞癌が疑われたため当科に紹介された。左下腿外側に14×13mmの不整形,扁平に隆起する角化性の淡褐色局面を認めた。摘出標本の病理組織では,病変は全体に好塩基性に染まる表皮細胞の増殖より成っていた。腫瘍の辺縁部は,異型性のない表皮細胞の増殖であり,偽角質嚢腫などを認め,脂漏性角化症の像であった。これに対し腫瘍の中央部は極性の乱れた,核の異型性を伴う表皮細胞が表皮全層性に増殖し,異常角化細胞も認めBowen病の所見を呈していた。同部では辺縁に比べKi67が強く発現していた。以上の組織所見から脂漏性角化症内に生じたBowen病と考えた。稀ではあるが良性の脂漏性角化症内にBowen病などの悪性病変を生じる事は,以前より報告されており,念頭に置いておく必要がある。