2014 年 28 巻 3 号 p. 268-273
家族性悪性黒色腫(FMM)の2家系を報告した。症例1:34歳,男性。父に眼球結膜の悪性黒色腫の既往がある。小学生時より,躯幹・四肢に大小の色素斑が多発した。最近,胸部の色素斑が拡大したため受診した。初診時,胸部に辺縁不整な15×18 mmの黒色斑を認めた。組織学的に胸部は悪性黒色腫(SSM),背部の色素斑の一部はdysplastic nevusと診断した(dysplastic nevus症候群)。症例2:63歳,女性。姉に足関節部の悪性黒色腫の既往がある。患者自身にも59歳時に左上腕の悪性黒色腫(SSM)の既往がある。下腹部に直径15 mmの黒色ドーム状の腫瘤を認めた。組織学的に悪性黒色腫(SSM)と診断した。本邦でのFMMの報告例とあわせて7家系を集計し文献的考察を加えた。また,第1例ではCDKN2A遺伝子とCDK4遺伝子を解析したが,どちらのgermline変異も同定されなかった。他の遺伝子異常によって悪性黒色腫が発生した可能性が示唆された。